作者さまご紹介の通り、実話をベースにしていると知ったうえで、調べながら読み進めると、どこまでが実際の出来事で、どこからが小説として整えられた部分なのかを考える楽しさがありました。
単なる史実の答え合わせではなく、実話の持つ強さを物語としてどう読ませるか、という点がとても面白かったです。
特に印象的だったのは、マザー・グースの使い方でした。
最初は海に漂う主人公が口ずさむ子どもの歌だったものが、声明文への抵抗になり、最後には捕虜たちの名前を記憶するための器になる。
軽いはずの「イーアイ・イーアイ・オー」が、読み終える頃にはまったく違う重さで響いてきました。
「馬鹿」と見なされた男が、その立場を逆に利用して仲間の存在を外へ届ける。
戦争や収容所の重さの中に、知恵としぶとさとユーモアがある、印象深い作品でした。