第6話

「こっちですよ」


渋い声を頼りに視線を向けると、1人の中年男が私の目の前に座っていた。


緑色の着物に同じ色の頭巾を頭にかぶっているところを見ると…占い師、いわゆる易者と言う職業の人だと言うことがわかった。


若菜に視線を向けると、彼女はまだ電話の最中だった。


少しくらいだったらいいかな。


私は心の中で呟くと、易者に歩み寄った。


「あの…占ってもらっても、いいですか?」


そう聞いた私に、

「よいですよ。


さあ、左手を見せてください」


易者は虫眼鏡を手に持つと、私に言った。


へえ、手相で判断するのか。


箸みたいなものをジャラシャラと動かして占うのかと思ってた。


易者の前に左手を差し出すと、

「どれ…」


易者は虫眼鏡を使って、私の手のひらを覗き込んできた。


ううっ、何だか緊張してきた…。

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