*第二十九日目 六月九日(月)
本日は五時半起床。天気予報では、今日から崩れると報じていたのだが…カーテンを開けると、雲は多いものの晴れ。
六時半にはほぼ準備を整え、下の食堂へ。ここは、「お食事
朝は、郷土料理「さつま定食」。
関東人にしてみれば、「おでん」の具に使う「さつま揚げ」を連想してしまうのだが…「さつま」とは、魚の切り身で作った汁に
それで、今日の朝ごはんは、お
それに、固形燃料の上に
その後、歯磨き&トイレを済ませ、七時少し過ぎに宿を出る。
「さて…」
「古い町並」は昨日見物済みなので、さっさと「国道56号」を目指す。宿の窓から見えていた、南の方角。ガソリン・スタンドや、回るファミレスの看板が見えたあたりだろう。それほどの距離ではなさそうだ。
宿を右に出て、すぐ先。「からくり時計」のある小さな広場の角を右折。
見当を付けて路地を歩き、通勤と思われる車が数台走り去った、少し広い道に出る…と、右方向に、国道と
角を左に曲がったすぐ先に、コンビニも見える。ここで今日の食料調達。店先で、缶コーヒーを一本飲み干してから出発。
国道右側には、「中山川」という結構大きな川が流れている。「どうせ右折だろう」と、さっさと
間もなくの所に、下を走る「国道379号」。
(この道は、しばらくの区間、「国道380」と重複している)。
右折して、その道に入る。すぐに「道の駅 内子フレッシュパークからり」があるが、まだ休憩する時間でもない。先へ進もう。
道は「小田川」沿い。山間部なので、川幅は広くはないが、グッと落ち込んで、クネクネと蛇行した川。
その川をず~っと右に見て、緩やかだがず~っと上り。周りを山々に囲まれた、天気の良い国道を歩く。ほとんどの箇所に広い歩道。
所々で旧道に入り、二つある「和田トンネル」を抜ければ、ノーベル文学賞作家「大江健三郎」氏の出身地「大瀬」の街。
旧道で市街地に入って行くと、「集落」と言うより、ちょっとした「町」。店々もある。
新しい遍路小屋があるが…自転車遍路のおじさんが寝ていて、邪魔をしては悪い。
その少し先。民家の建ち並ぶ一角にも、同じような遍路休憩所。ちょっと腰を降ろしてみるが…それほど大きな街ではないが、朝の
その先で、道は「工事中 全面通行止め」。右を流れる川沿いの路地に出て、そのまま街中を抜ける。
工事区間を過ぎた旧道に戻ると、川向こうの国道を行く、逆打ちと思われる遍路さんの姿。
ほどなく、川を渡ってその国道に合流。
そこから少し歩き、左に入る山道がある所。今では橋が架かって、まっすぐな道になっている場所。
その左側に、ほんのわずかだが、地形に沿って右カーブで湾曲した旧道がある。
その旧橋のたもとに、今では新道に対して背を向けて建つ、古めかしい・良い雰囲気の商店が二軒。
わざわざそちらに入って行き、旧橋を渡ると、その先に綺麗なバス待合い小屋。
時刻は九時十分。手前の商店で飲物を買い、本日一発目の休憩。
場所は「河口橋」。「こうぐちばし」と読むようだ。冷たい500ml・百円の炭酸飲料を飲みながら、二十分ほど。
ここまで、右足の例の箇所…小指の付け根の外側が痛み出し、ノン・ストップ二時間で、8キロしか歩けていない。靴を脱いでマッサージ。
(以後は問題無し。ただ、宿に着いてから、今度は右足親指と人差し指の
この後も、天気予報とは裏腹に、ずっと快晴。天気は良いにこした事はないが、気温が上がり始め暑い。
それに、伸びない距離に、少々アセッて汗まみれ。
このあたりに、番外霊場「
しかし、まったく見落としてしまったのだろうか? 全然気が付かなかった。
「ふう~」
道がより山間部へと進むに従い、手が入っていない場所は極細の道。工事中の箇所もある。
やっと「
向かい角には商店があり、民家も点在している場所。時刻は十時半を回ったくらい。
ここまで道路標識ばかり見て、伸びない距離に少々
左に折れると、急に新しくて広い道。道路右側に、「吉野川」のバス待合小屋。向かいの建物前にあった自販機で冷たい物を買い、ここで二十分ほど、本日二度目の休憩。
この先も…新しい道あり・狭いままの所あり・工事中あり・工事途中の砂利道あり。ただ、交通量はとても少ないので、歩くのに支障は無い。
「田渡川」沿いの道を7キロほど歩けば、道路左側に「落合大師堂」。
新築なのか、綺麗なお堂。ここは番外霊場でもないため、詳細はわからない。
横の並びには、本日は閉まっている直売所と自販機。時間は十一時四十五分。ここで飲物を買い、ここの軒下でお昼のおにぎり。ここに十二時十分まで。
風が吹き、曇ってきた。周りを山で囲まれているので、遠望は利かないが…その雲は過ぎ去って、再び晴れ間が広がる。でも、天気は下り坂のようだ。
ここから国道を右に
向こう岸の木のてっぺんに、
道が細くなったあたり。左に小さなプールが一つ。
反対側の高台には、建築会社の建物と、古い体育館風の建物。「小田町郷土資料館」の看板。かつてここは学校だったのだろう。
たぶん、「
閑散とした手前の集落に、「文房具」と書いてある、商店の名残りのある家があったり…
「浮船橋」で左岸に移り…
右下の川向こうに、神社のある少し大きな集落を見て…
(おそらく、「延命山 厄除大師」)。
やがて「元成」の集落。
Y字路の正面に神社がある。
「三嶋神社」
ルートは左なので、そちら側に出れば、道路の向かいにJA系と思われる商店。ここでパンと飲物を買う。
「今日は多いね」と、店のおばさん。先を行く人があるようだ。
すぐ先に、バス待合い小屋。時計を見れば一時十分。お昼休みからピッタリ一時間。ここで二十分ほどの休憩。
ここから先は、狭い峠道。まだ民家も点在しているが…強い風と共に、灰色の雲が出て来た。
風は
「ヤバイ!」
自然とピッチも速くなる。まだ宿も決まっていないのに…先ほど休憩したバス停は、ケータイ圏外だった。
峠が近くなり、まだ舗装路だが、遍路道は左上に
ポツポツと雨粒が落ちて来るが、まだ風に飛ばされて来る程度。傘も合羽も用意せず、セッセと歩く。
せめて、この峠を越えるまで…その後に、もう一つ峠がある。
せめて、宿に予約するまで…「南無大師遍照金剛」。
その思いが通じたのか、灰色の雲は去り、白色、そして再び日が照り出す。
本日も後半になって、一発目の峠。
「下坂場峠」入口。
舗装路から左の地道に入るのだが…「
そこに、動く二つの白い影。昨日の二人。おっさんとおねえちゃんだ。
「アレ?」
笠を取った女の子の顔をよく見ると…見覚えがある。
「おっきなカエルにオタマジャクシ」
十六番「観音寺」近くの宿に、女性同士の即席コンビで泊まっていた
ここで休憩していた模様。ちょうど歩き出すところだったようだ。
おっさんの話によれば…
この峠は、すでにかなり登って来たせいか、大した事はなかった。
山道のつづら折れをいくつか過ぎ、峠手前で先ほどの県道に合流。舗装路を上れば、間もなく下り始める。
森が切れたあたりで、広い路肩に立ち止まり、ケータイの電源を入れてみる。アンテナは、何とか一本立つ。そこで、この先「
そこに、先ほどの二人。少し一緒に歩く。
シャガレた声のおっさんは、かなりの話し好き。大体が、おっさんのペースで話が進む。昨日は一言も声を発さなかった女の子は…口数は多くはないものの、おっさんに振られれば可愛い声でしゃべる。
このあたり、民家がポツポツ現れ、ちょっとした集落。「へんろマーク」に従い進めば、二つ目の登り口。
左手に「真言宗 福城寺」。
時刻は二時半。ずっと休憩していなかったので、ここで二人には、先に行ってもらう。
お寺に登ってみるが、境内には休めるような場所がない。
下に降りて、道端の石垣に腰を下ろす。天気は良いが、さほど暑くはない。ここに十五分ほど。頃合いを見計らい登り始める。
ここから「ひわた峠」まで、2・5キロほどだ。細い道だが舗装されている。
右側の小さな谷を挟んだ向こう側には、木こりのおじさん(?)。やがて山道に入る。
草に覆われたフカフカの道から、森の中のガレ場へ。大師ゆかりの「じたんだ石」の近くで小用を足して、一気に峠へ。
木々に囲まれた森の中、峠のベンチで先発の二人がおやつを食べている。体力的にはこちらの峠の方がきつかったが、軽く汗をかいて・軽く息が切れる程度。ここで一区切りだし、素通りできるような雰囲気でもないし…こちらもベンチの端に腰掛ける。
おっさんの弁によれば…予定していた次のお寺の宿坊は営業しておらず…その先の宿は電話がつながらず…結局、こちらと同じ宿にしたそうだ…と言う事で、そこからはしんがりを務め、おっさん・女の子と三人列になって峠を下る。
何だか人のペースでは、周りの景色も良く憶えていなくて…いつの間にか舗装路を歩いており…前方には、今晩の宿泊地「
そんな頃…「歩き旅は初めてなんですよ」。
どのような流れだったのか? まったく憶えていないのだが、おっさんの質問にそう答える。
「いつもはオートバイで…」とそこで、女の子が振り返る。興味ありありといった感じで、こちらを見ている。
「こん人も、バイクに乗りよるん」
今度はおっさんが振り返り、顔で女の子の方を指し示す。今は事故って無いが、
「なんぼや?」
「883cc」
「?」
「ハーレーの一番小さいヤツですよ」
「小さい言うても、それだけあれば十分じゃろ」
女の子は、そっち方面の話をしたそうな空気。でもこちらも、自ら話題を提供するほど口数が多い方ではない。おっさんの振りに答えるのみ。
そうこうするうちに、街のメイン・ストリート「国道33号線」に出る。ちょうど向かいに郵便局。おっさんはお金を下ろすため、そこに向かう。
(「歩き遍路の旅」には郵便局が便利だ。旧道を通る事が多い遍路道。その道沿いには、昔からの郵便局がある。車では不便な狭小「P」だったりするが、歩き旅には重宝する。今回は銀行利用だが…かつて学生の頃、銀行のオンライン化が進んでいなかった時代には、郵便局を利用していた。やっと郵便局のオンライン化が始まった時期。だからもちろん、カードなど無かった。常に通帳と印鑑を持参し、そこに押される各郵便局のスタンプが、旅の記念にもなったものだ)。
おっさんを待つ間、あたりを見回す。宿はここから右方向のはずだ。
その間、女の子と少し話をしていると、出て来たおっさんは「向かいの酒屋でチューハイ」と騒いでいる。
三人で再び道路を横断。二人の横で自販機に向かい、今晩の飲物を買い込む。終わってみれば、二人が向かいで待っている。宿の方角はわかっているようだ。
その先の交差点、手前の反対側角にスポーツ用品店。残り少なくなったテーピング・テープを買うため、二人には先に行ってもらう。またまた道路を横断。
本日の宿は、そのハス向かい少し先。見れば数階建ての、いわゆる普通のアパート(マンション?)。一階は貸し店舗。ここの経営者がやっている食堂の他、英会話教室があり、先生は日本人の若い女性だが“see you”と言って子供達を送り出しているところ。
時刻は四時二十分。食堂に入ると、おっさんが牛乳を飲んでいる。宿の
宿帳に記帳し、部屋に案内してもらう。ここの三階。階段を上がった目の前の、一番右端。307号室。かつてはアパートとして使われて部屋が、今では宿になっている。
玄関を入った左側にバス・トイレ・クローゼット。右側にはコンロが載った流し台。奥に六畳ほどのフローリングの部屋。テーブルとテレビが置かれ、サッシ窓の外にはベランダもある。これなら自炊もできるし、長期滞在向き。
(元々がアパートなのだから当然だ)。
ハワイのホテルを思い出す。
(かつて「ホノルル・マラソン」参加のために宿泊した所は、「ホテル」だが「分譲」の部屋もあり、住んでいる人もいるようだ)。
とりあえず、1F奥の洗濯機(無料)で、今日着ていた物を洗濯。その間、湯舟にお湯を溜めながら少々くつろぎ、乾燥機(これも無料)を回している間に湯に浸かる。
その間、天候急変。洗濯物を引き上げに下に降りると、雨が降り出している。そこに、おっさんが戻って来た。二人はこの先のお寺に行って、納経してきたそうだ。
そうこうするうちに、夕食の時間。「夕食は六時」と言われていたので、六時を回ったところで1Fの食堂へ。
メインは「キジ鍋」。(スープが旨い)。
「刺身」少々。(添え物のネギとキュウリが新鮮)。
「ゴーヤ」と思われるあえ物や煮物。ごはんはお替りして二膳。(鍋なので汁物は無し)。
それに漬物・小マーボ豆腐など。
鍋には豆腐や舞茸、えのき茸、白菜。別添えでうどん。
そしてメロン一切れ。
最後にお茶一杯で、もう満腹・満杯。
入って来た時には誰もいなかったが、後からおじさん(おそらくお遍路さん)と、男性四人組(出張だろうが職種は不詳)。作業服の二人組みが、フロント裏のパソコンを借りてガサゴソやっているし、旅姿の若者二人がウロついていたり…前の駐車スペースはほぼ満車。仕事で来ている人も大勢いるようだ。
上に上がろうと洗濯場の入口前を通ると、おっさんが洗濯中。夕食は七時からだと言う。「後で声掛けますから」と言っていたが…二人とも、郵便局から宿までの間に、缶チューハイのフタを開けるほどの酒好きみたい。でも、今日は飲む気分ではないのだが…。
あ~あ…外は雨が本格的になってきた。明日は一発目から山道なのに…その後には、もっときつい登りも控えているのに…ひとり静かに、さっさと寝たい。
本日の歩行 32・40キロ
42081歩
累 計 1012・80キロ
1315857歩
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