第2話 ……まあそうなるわな、普通は。
背後は潮風の強く吹く崖の先端と果ての無い海、俺の目の前には複数の跳ねる色付き半透明なゴムボールスライム共(仮)。
追い詰めた余裕なのか立ち止まる俺(多分犬かオオカミ)を攻撃するでもなく集まって小刻みにダムダムしてやがる。どっかのバスケマンガかっつうぐらいに。
お陰でちょいと考える余裕はあったが、逆転の策なんぞ思い付く訳が無い。こちとら世紀の凡才様なんでね、イケてる主人公じゃあるまいし。
そうこうする内にファイルラウンドの幕が開けた。各々が不規則なバウンドをしながら多方向から俺に襲い掛かってくる。
対する俺のアドバンテージは四足歩行由来の機動力しか無い。迫る個体をよく見て、当たらないように避ける。痛いのが嫌でボールを無様に避け続けたガキの頃の
1、2、3とビギナーズラックで躱せるも、その後は次第にヒットが増えていく。向こうも連携してんのか意識共有でも有るのか予測のつかない動きをしやがんだチクショウめ。
偶然正面に来た一体に噛み付いてみたが歯が刺さんねぇ。ガチッと激しく牙が噛み合って余計なダメージを自分で喰らう。相手は器用にするっと抜けたのか集団に戻ったらしい。
そう言えばこの姿になって戸惑っている内にいつの間にか自然な身動きが取れていた。そこはこの
……不味いな、自分の動きが鈍い。骨が折れては無いがどっかしらが痛むし血も出ているだろう。
対して向こうはダメージの有りそうな個体は見当たらない。自らを跳ねさせるのに特化しているからか、激しく動いた程度では疲れもしやがらねぇと来た。
アタマの中では未来のポンコツロボットが『なんか無いかなんか無いか』と慌ててポケットから役に立たなそうなガラクタを取り出しては周囲にぶち撒けている絵が浮かぶ。こんな時に思い出すのがアレかよ。
残り時間は少ない。動き続けながら打開策を探るも、その思考自体が段々とぼやける始末。こりゃもう詰んだか……?
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