第2話 ピン芸人
コンビ解散から1年。俺は未だにピン芸人を続けていた。ネタを書いてみると意外とピンネタの才能があったようでそれなりに舞台にも出演させてもらっていた。さすがに舞台だけでは生活できないのでバイトも続けているが、舞台での給料はだいぶ良くなった。
たまに東京の舞台にも呼んでもらえるようになった。大きな進歩だ。
「植木、上手くいってるか?」
「悠樹さん。」
久しぶりに元相方佐藤悠樹にあった。彼もピン芸人として活動を続けていて、舞台に出てる数も変わらないはずなのに何故か共演がなかった。先輩の配慮なのか分からないけど俺は早く一緒に舞台に立ちたかったのに。
「悠樹さん、なんとかやってますよ俺は。ネタの作り方聞いといて良かったです。」
「そうか、良かったよ。俺も裕貴も舞台の数増えたもんな。俺らピン芸人の方が向いてたんかもな。」
「そうですねぇ、可能性はありますね。でも、俺ら有名になったら一夜限りのサイレンス復活とかやってもええんですよ。」
「そうやな。このふたりってコンビやったんやって言われるくらいにはピンで売れような。あ、マネージャーから連絡いってるかもしれんけど今度賞レースに向けてツーマン考えとるんやけど出てくれへんか。」
「え、いいですけど、俺でいいんですか。」
「なんで裕貴以外の選択肢があるんだよ。俺らは解散したけど別の方法で売れるんやからな。」
「悠樹さん。ちょっとカッコつけすぎじゃないです?」
「言うなよ、そういうことは。日程とかはマネージャーに押さえてもらってるはずだからよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
先輩とツーマン。嬉しい。嬉しい。認められた気がした。やっと先輩と対等な関係になれる。
ネタどうしようかな。新ネタおろそうかな。先輩と一緒に決勝行きたいな。
「なんや植木くんご機嫌やな!」
「なに?都築。」
「なんで俺が来たら不機嫌になんねん!」
これは
悪い奴ではないから数人で飲みに行ったりはするんだけど。
「別に不機嫌になんかなっとらんよ。」
「さっき佐藤さんと話してたけどコンビ復活するんか!?」
「お前そんなサイレンス好きだったか?残念ながら復活する予定は今ん所ないよ。」
「えぇ。」
「なんでそんなに楽しみにしとるんよ。1回限りの復活はあるかもしれんけど完全復活はないよ。お互いにピンで上手く行き始めたし、わざわざ復活するまでもないやろ。」
「俺はずっと待ってるからな!サイレンスの時のお前は輝いてたから、一夜限りでもええ。絶対復活させてくれ。」
「悠樹さんがどう思っとるかも分からんし、そういう機会があればやるわ。」
「言ったな!劇場の年末公演でみんなの願い事集めてんのは聞いたか?それに俺入れようとおもんやけど!」
「まだ解散してから1年しかたっとらんのやでやめろ。そんなこと言ったらお前の前のコンビのこと入れてやるからな。」
「え、じゃあやめる。」
「素直でよろしい。今度ツーマンやるんだよ。良かったら来いよな。」
「おう!絶対いく!」
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