第2話 女性は同町内在住の東西野千代海さん

 そうか、思い出した。この女性、細身だけど必ずライス特盛で代え玉をするお客さんだ。

「いつも、ご贔屓にしていただきありがとうございます。お客さんは、相当に丈夫な歯をお持ちのようで。骨を砕く音がこちらまで響いていましたよ」


「うん、そうなのよ。なんでか知らないけど、昔から歯と骨は丈夫なのよ。それによく言うでしょ、フライドチキンは骨が美味いって」


 聞いたことのない文章だよ。スペアリブは骨ギリギリの所が美味いのは周知の事実だけど、フライドチキンに関してはそんな格言はない。

 

 フライドチキンが美味いのは確かだよな、骨が美味いかどうかは置いておくとして。

 店内で扇風機が回っているので、フライドチキンのいい匂いが外に漏れ出しているのか。もの凄くいい匂いだ。食欲が三段階くらい高まる感じだ。


 俺がフト、我に返ったのも、この匂いによる所が大きいからな。


 いっその事、フライドチキンラーメンでも出してみるか?

 うーん、どうだろうな。コロッケを蕎麦に乗せると凄く美味くなるんだが、コロッケをラーメンに乗せると油っぽくなりすぎて合わないんだよな。フライドチキンラーメンも油っぽくなって駄目だろうな。

 

 基本的には、スープの醤油味は鶏ガラで出汁を取っている。


「それじゃあ、店長さん、又今度お店に行きますね」

「はい、お待ちしております」


 女性客は出ていった。


 さて、ゆっくり食べながらアイデアを練ろう。

 既に、鶏ガラはつかってるからな。チキン、チキン、チキン、うーーん、チキンライス、チキンステーキ、チキンカレー、カレーラーメンはどうだ? 駄目だな、別でカレーライスで販売すればいいだけの話だ。第四のスープにはならない。


 それにして、フライドチキンは美味いな。健康面からしたら、毎日は食べられないけど。それを言ったら、ラーメンも毎日食べていい代物じゃないけどな。


 フライドチキン店を出て、散歩を再開した。

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