捏造 豚骨ラーメン誕生秘話

桃月兎

第1話 ラーメンスープは醤油、塩、味噌󠄀のみの時代

 八月の終わり、店は夏休みって事にして一週間の定休日にした。

 俺は個人経営のラーメン屋、海青麺のオーナーにして料理長だ。

 夏はラーメンの売れ行きが悪いってのは前々から決まってるもんだ。

 どうしたらいいんだろうな。やっぱり、スープが三種類しか無いのが問題なんだろうな。なんか新しいスープでも開発できりゃあいいんだけど。それと新スープに合う具も必要不可欠だよな。なんかいいのがありゃあいいんだけど。散歩しながら考えっか。


 自宅兼店舗に鍵を掛けて、散歩に出掛けた。

 何処かにアイデアでも転がってないかと、漫画家の様な事を考えながら、町の看板や通行人に目を向ける。

 醤油、塩、味噌󠄀、この三つの共通点は何だと言えば、回答としては塩分を含んでいる事だ。まかり間違ってもチョコレートラーメンなんぞ代物は売れるわけがない。それは言い過ぎか。お菓子として食べるのなら、有効だろう。そんな商品は見たこともないが。


 気がつくと一時間ほど、散歩していた。

 フライドチキン店の前か、こんな所まで来てたのか。折角だし、偶にはフライドチキンを食べてみるか。

 店内に入り、フライドチキンとチキンバーガーとフライドポテトとワカメスープを注文した。


 店内で食事をしていると、異音が聞こえて来た。

 丸で骨を噛み砕く様な音がしている。

 音の出処を探すと隣のテーブルから聞こえてきている。文字通り、客がフライドチキンの骨を噛み砕いて食べているのが、目に飛び込んで来た。


 ええええええええ、フライドチキンの骨って食えるのか?

 始めて見たぞ、こんな光景。

 試しに自分のフライドチキンの骨を噛んでみたが、とても刃が立たない。歯が立たないが正解か?


 どうなってんだ一体全体、あの人のフライドチキンの骨が特別で柔らかくなっている、それともあの人の歯が特別なのか。フライドチキンの骨が柔らかかったらあんな音はしないか。そうするとあの人の歯が凄く丈夫なんだろうな。それにしても、あの女性、何処かで見た事あるような。


 俺の視線に気づいたらしく、女性と視線があった。

「海青海の店長さんですよね、今日は夏休みですよね」

 女性から声を掛けられた。どうやら、ウチの店の常連さんらしいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る