傲慢公爵は“偽り修道女”の献身的な愛を買う
久川 航璃/ビーズログ文庫
序章 傲慢公爵は偽り修道女の献身的な愛を買う
立派な
『くたびれた修道女の見すぼらしい格好をした君は、どうしたって貴族の僕には
屋敷の
古めかしい修道女の服は雨を吸ってぐっしょりと重く、
たった今、元になった恋人であった少年からの一方的な宣告。
リリィの心情を決めつけているものの、自身も否定の言葉を持たなかったのも事実。
けれど、決して彼よりお金を優先させた覚えはない。
これまで自分なりに大事に思ってきた彼に、裏切られたような気持ちになった。
同じ
だから、リリィは
だから、リリィは愛を告げる恋人など二度と
愛なんて無価値なものじゃ日々暮らしていけない。彼の言うとおり愛より金だ。
――だというのに、目の前の男はなんと言った?
「その愛を言い値で買おう」
リリィが過去の回想から
宝石をちりばめたかのようなキラキラしい容姿は、視線を向けることすら庶民には
そんな彼の横にある小さなテーブルには金貨が積み上げられている。こちらは実物だ。本物かどうか思わず疑ってしまうほどの、今まで見たこともない量の金の山である。それをこれ見よがしに
いや、実際彼の身分は元王子で、国家予算に
ダミュアン・フィッシャール。二十三歳という若さで
庶民といえども
そんな雲の上のような存在に呼びつけられて、今こうして自分が対面していることすら信じられないというのに、その上かけられた言葉の意味がわからない。
「おい、聞いているのか? それとも聞こえなかったのか」
つまり、公爵本人がそう
貴族は庶民にはよくわからない感覚で動いている。傲慢な貴族になればその
金さえ出せば、なんでも思いどおりにできるって?
――残念ながら、リリィはお金のためなら、なんでもするのだけれど。
そう
「お前のその尊い愛を言い値で買ってやるから、俺を愛するんだ」
どうやら聞き間違いでも、言い間違いでもなかったらしい。愛、ときた。
リリィは売れるものはとにかくなんでも売ってきた。手作りの造花や洋服、果てはガラスの素材になる貝がらまでも拾った。労働力や
孤児院で
しかしだ。だからといって、これはないのではないだろうか。
昔裏切られて、
とにかく思うことは一つだけ。
――本当に、傲慢なお貴族様の考えることってまったくもって
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