結婚篇

結婚篇


大学を卒業した後に、籍を入れる事になった。婚姻届けには、書く事が、沢山あるのだ。


「名字は、変わらないね。」

「不満か?椿。」

「不満じゃないよ。一条のままで居たかったからね。」

「俺以外と、結婚したら一条じゃなくなるんじゃないか?」

「多分ね。だから、初君で良かった。」

「そんな理由で、結婚を決めるなよ。」

「勿論、好きだよ。初君。」


初君に、思い切り抱き着く。初君は、抱き締めると、柔らかくて、柔軟剤の匂いがする。これから、同じ柔軟剤を使うのかな?


「初君、どの指輪が良いかな?」

「どれでも同じだろう。」

「この控えめなダイヤの付いた指輪が良い。」

「それで良いんじゃねーの?」


大学を卒業して、宝石店に行って、結婚指輪を買う。キラキラしていて控えめに光るダイヤの指輪は、とても、綺麗に思えた。


「初君、準備は良い?」

「何時でも、良いよ。」


今日、私は、初君と結婚する。紆余曲折あったけれど、一条椿を嫌っている初君と仲良く出来たのだ。


セッティングした結婚式の音楽が流れる。大好きな初君と一緒にケーキを切って、ブーケトスをする。


「かおる君が取ってる。」

「あいつと付き合う奴って、どんな奴なんだろうな。」

「きっと、良い子だよ。」


かおる君にも、幸せになって欲しいと思った。幼少期から、私を助けてくれるかおる君が選ぶ人だから、きっと、可愛くてお淑やかな人なんだろう。


「かーおる君。れーん君。」

「椿、、、。」

「俺ら、もう、帰るところなんだけどな。」

「来てくれて有り難う。似合う?」

「似合うよ。椿。」

「取るなよ。かおる。」


初君と、かおる君は、若干、仲が悪い。きっと、初君は、かおる君に、私を取られたくはないのだろう。


「初君、大好き。」

「いきなり、何だよ。」

「写真撮ろうよ。」


そうして、照れているのを隠すように四人で写真を撮る。最初は、好きでも、嫌いでもなかったんだ。ただ、仲良くしたいだけだった。だけど、私の中で、初君の存在は、こんなに大きいんだね。


私の物語は、きっと、メジャーデビューした人みたいに有名な人の人生じゃないから、他と比べたらつまらないかもしれない。


だけど、面白い人生だ。きっと、どんなに嫌いな人でも、仲良くなろうと思えば未来は開けると思う。


もし、何処かでこの人生を、共感してくれる人がいるとするのならば、きっと、その人は、とても、優しい人なのだと思う。


「初君、朝御飯、食べようよ。」

「椿、眠い。」

「全く、仕方ないな。初君は、、、。」


バカップルみたいに、初君に朝御飯を食べさせる。初君は、普段は、忙しいんだけど、時々、こうやって、緩くなるのだ。そうやって、緩やかな時間を送るのだ。


私には、きっと、沢山の問題がある。問題があるけれど、問題のない人なんて居ないと思ったんだ。


これは、沢山の一条椿に問題があるという話である。様々な問題に立ち向かうのではなく、仲良くして行けば良い。私は、そう思うんだ。

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