第26話

「羊羹って甘過ぎない? 


 これでもかって甘さがくるよね」



 デブは羊羹を飲み込んだ後に、「甘いものは甘くていいさぁ」と言った。



「そうなんだけれど、甘過ぎると甘さしか感じなくなるじゃん」



 デブは首を傾げた。



「話を戻すと、結局、デブは思考がデブなんだよ。


 自分自身でデブを許している。


 鉄の女王と呼ばれたサッチャーってわかる?」



 デブは首を傾げたまま微笑んでいる。


 こういう置物がアンコールワットにありそうだ。



「考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命になる。


 どこかで聞いたことがあるでしょ? ない? 


 だから、動くのだるいなぁ、もっと食べたいなぁって、いつも考えているからデブになるってこと。


 そして、デブでもいいやって本人が認めているからデブのまま。


 心当たりあるでしょ?」



 デブは大きくうなずいている。


素直なデブ。



「なら、君はさぁ」



「何?」



「自分はいつも痩せていたいと思っているってこと?」 



 なるほど、そうきたか。


 デブは羊羹を咀嚼したあと、ビールを飲んだ。


 デブは飲んでも変わらない。


 飲むお金が無駄じゃないか。


 いや、飲んだらデブは話すスピードが若干、落ちるから無駄ではないのか。


 いやいや、時間がさらに無駄になっている。 



「君の、そういうのって、きつくなぁい?」

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