第34話

「女は、好きじゃない男とあんなセックスはできないからな。

 待て待て、由梨ちゃんに好きって言われて、俺のかたくなってる? 

 車行って、する?」



 しない、と、ゆっくり体を離す。



「なんで?」



「昨日のが、すごく良かったから」



 賢人の後ろにあった荷物を取り、マモルくんと向き合う。


 マモルくんの顔がおどけているようにも見える。



「……由梨、おい、由梨。聞いてる?」



「来てよかった。あのまま別れていたら、一生、賢人を嫌いだったかも」



 マモルくんは許してくれても、私はダメみたい。


 賢人に溺れる自分を許せない。



「私、ここで別れて、タクシー呼んで帰る」



「やり直さないんだ?」



 うん、とうなづく。



「俺、次のに行くよ」



 二度と、賢人とセックスすることはない。


 さっきみたいな誘う言葉を、かけられることもない。


 まだ、賢人の匂いが残っている体が、賢人を求めているのに。



「麗奈の父親は俺だけだし」



「わかっている」



 賢人が息を吐いた。



「結局、由梨ちゃんは由梨ちゃんってことだな」

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