第32話

眼鏡をかけた賢人が運転するレンタカーが近づいてくる。


 私は、マモルくんの横に立った。


 マモルくんと一緒に、賢人が車を止め、おりてくるのを見つめる。


 心臓がある場所が大きく波打っているような気がする。



 賢人は無精髭が生えている口元で笑った。



「写真、撮ったんだろ?」



 うん、とうなづく。



「俺もマモルくんと撮っていい?」



「なんで?」



「いいさぁ。せっかく宮古に来たんだし。

 宮古と言えば、宮古島マモルくんとうずまきパンだろ?」



「綺麗なビーチや、有名な橋もあるし」



 賢人は私にスマホを渡してから、マモルくんの前に立った。


 スマホを構えたら、賢人がマモルくんの前でバンザイをするので笑ってしまった。



「どうしてマモルくんを隠すの?」



「主役は俺さぁ」



「よくわからないけれど」



 3枚写真を撮った。



「帰ろう。飛行機の時間もあるし」



 賢人が私の鞄を持つ。



「自分で持つから」



 鞄に手を伸ばしたら、賢人は鞄を体の後ろ、私の手が届かないところへまわした。



「あのさ、賢人」



「お前は、俺と一緒に帰るの。行くよ」



「でも、私」

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