第3話

妻が妊娠、出産、育児中の浮気。


 よくある。


 あまりにもよくある。


 夫のスマホを見ながら、私は微笑んでいたかもしれない。



 そこで、スマホを置けばよかった。


 浴室から聞こえてくるシャワーの音が途切れてくれれば。


 麗奈が泣けば。


 添付ファイルに気がつかなければ。



 添付されている画像を開く。


 映っていたのは、今、自分が座っているソファー。


 彼女が横になっている。


 胸と下部はタオルで、私の好きなサーモンピンクのバスタオルを使って隠している。


 笑っている。


 大きく。



 跳ねるようにソファーから立った。


 喉へ、夕飯に食べたフーチャンプルーの、卵を絡めた麩が上がってきて飲み込む。


 見なければよかった。


 けれど、画像を脳裏に焼きつけようとしている自分がいる。


 吐き気が襲ってくる。


 このソファーは汚れている。



 スマホをテーブルに投げるように置いてキッチンへ行き、出ないとわかっていたけれど吐く真似をする。


 罰のようにシャワーの音は続いている。


 私は勢いよく水を出してシャワーの音を消し、胃を収縮させたけれど吐けなかった。

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