秘密 ーー猫の証言は伝わらない
@yutuki2022
第1話
開くと信じて疑わなかった扉に拒否をされ、途端に記憶はよみがえった。今日は鍵を持って出かけるように言われていたのだ。
常ならば迎えてくれる叔母は近頃興味を持った慈善活動とやらの、近づくイースターをどう盛り上げるのかの会合にと出かけている。
昨夜聞かされた纏わる諸々を、朝にはすっかり忘れてしまっていた。机の右端の引き出しの様子なども思い出す。変わらずそこに、入ったままの鍵の姿だ。
早くに思い出していれば、時間つぶしに寄るところなどいくらでもあったし、あるいは仕事を片付けていても良かった。
しかしここまで帰ってきてしまってからでは、もう一度街まで戻る気にはならない。思い浮かべた喧騒に軽く疲労を覚えて、気付くのだった。どうやら疲れているらしい。
道向こうののパブに行くという選択もあるが、それも煩わしく思えた。春日の夕刻、むしろ静かに過ごしたい。
――仕方なし。石塀に手を、続いて足をかけ、あっと言う間にこちら側から彼の姿は消え去った。
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