第2話 ただいま百人待ちです
個人店(以後ラーメン屋とする)は、その数だけ営業形態があり、それぞれ独自のルールもある。
営業時間も様々で、チェーン店ではまず見かけない夜営業のないラーメン屋も多く、中には昼にやっていない店や、なんと朝七時から八時半までの一時間半しか営業していない店もある。
だから、たとえそれがチェーン店であったとしてもいつ何時から営業しているか調べないで行くのは愚の骨頂と言っても過言ではない。
それは定休日にも言える。
年中無休が多いチェーン店と違い、ラーメン屋は定休日も様々だ。
祭日でも定休日と重なれば休むし、中には週三日しか営業していない店もある。
――と、ここまではGoogle先生や食べログで簡単に調べられることができる。が、その情報だけを鵜呑みにすると痛い目を見ることになる。
それが、臨時休業――所謂、臨休だ。
前話で記述したように、ラーメン屋はそのほとんどが基本店主とパート・アルバイトで構成されている。大将と女将さん+アルバイトでも同じと考えてもらえばよい。
この時点で感がいい人は気づくと思うが、チェーン店とは違いラーメン屋ではラーメンを作るのは店主のみなのである。
中には店主の他に調理担当のスタッフがいることもあるが決して多くはない。
なので、店主が病気や事故になったらどうなるのかは火を見るより明らかだ。
たとえそれが営業日当日の朝であっても休みにせざるをえない。
逆に店主以外すべてのスタッフが休んでしまっても同じこと。ワンオペでは洗い物まで手が回らないため臨休になることもある。
この情報は当然、Google先生にも食べログにも記載されてはいない。
そこで登場するのがSNSである!
かなり古くから営業しているラーメン屋ならともかく、このご時世SNSをやっていないラーメン屋はかなり少ない。
何年か前は電話以外方法がなかった営業確認も、今やSNSで簡単に調べることができるようになった。
しかし、SNSをやっていないラーメン屋の臨休はどうやって調べればいいのか?
これはInstagramの場所検索で得ることができる。ただし、この方法はあくまで直近の情報だけであって、当日の臨時休業までは知ることができない。
何時間もかけて遠くのラーメン屋に行く場合もかなりの賭けだ。
出発した時には出ていなかった臨休情報が向かっている途中で出るかもしれない。
こうなってしまってはもう諦めるしかない。そんな場合はリカバリーの店を選んでおけばダメージも最小限で済む。
『どんなラーメンかな?』とか『何をたべようかな?』と考えるだけでも楽しいので、第三候補くらいまで決めてから出かけることをオススメする。
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次に重要なのは順番取りだ。
前話のやっちまった彼は、決定的にこのリサーチが不足していた。
そもそも順番を取るのにどんな方法あるのだろう?
誰もが知っているのが単純に『並び』だ。
これはチェーン店でもあるが、超有名店にもなるとそれはもうエグいほどの並びになる。
前にも述べたように二時間並ぶなんて普通だ。
超有名店に毎週開店三時間前から並んでいるラオタもいるし、私は長野のラーメン屋一周年イベント(七十食限定)に七時間並んだことがある。百人以上が並び、開店前に営業終了の札が出たことまである。
超有名店のその日限りの限定メニューともなると、時には前日から並ぶ人までいるほどだ。ただし最近は近所迷惑になるからと、前日並びを禁止しているラーメン屋も多い。
そして、並びはトラブルにもなりやすい。
一般的に認知されていないが、ラーメン屋は代表待ちを禁止している店がほとんどだ。
要するに『車を停めてくるから先に並んでいて』とか『店に先に着いたヤツが並んでいて』というのがそうだ。
そんなことよくやることじゃんと言う人もいるかもしれない。が、考えてみてほしい。
ラーメン屋に並んで一時間――いよいよ次の次に店に入れると思っていたら、前の客が代表待ちで二十人増えてしまったとしたら?
それを禁止しているラーメン屋は客に対して平等で良心的だと思わないだろうか?
そういった並びのルールがラーメン屋には必ずある。
そこまではSNSに書いていなくても(書いてあることもあるが)、並ぶ前に店前に貼られているルールをまず確認してから最後尾であるだろう人に「ここが最後ですか?」と声をかけて並ぶのがマナーである。
また、一緒に並んでいる連れが残っているからと列から離れる人がいるが、これもトラブルになりやすい。たとえばトイレとか水分補給の買い物とか、やむを得ない理由であったとしても、たまたま確認にきた店員やその後に並んだ人から見れば代表待ちでしかないからだ。
そんな時は並びの前後の人、または店員に一言声をかけて離れればトラブルになることはまずない。
食べログの低評価で『トイレで列から離れたら並び直すように言われた』という書き込みをして☆ひとつにしている人を見かけたことがあるが、先に書いたように本人が何も言わずに離れた可能性が高くその情報はかなり怪しいと思った方がよい。
今まで並びでトイレを禁止したラーメン屋は一軒たりとも見たことがないから安心して並んでもらいたい。
ちなみに、有名店に並ぶなら開店三十分以上前をオススメする。なぜならあなたが食事処を探す時まず何を確認するかを思い出してほしい。そう、今やっているかどうかである。
まだやっていない時間に行けば混んでいないのだ。
ただしこの理論は超有名店には通用しないので注意が必要である。
次に『整理券』と『記帳』だ。
整理券は決まった配布時間に整理券が配られるもので、記帳はチェーン店や他の飲食店でも見かけるように記帳ボードに名前を記帳するシステムである。
どちらも並びとは決定的な違いがある。
それがひとりで数人の順番を取れることだ。
整理券は基本的に一枚ひとりだが時には一枚一組が許可されている場合もある。なので、全員揃って整理券をもらいに行く必要がないのだ。
それは記帳も同じで、誰かひとりが記帳時に人数を書いておけばその時間にみんな入れるという仕組みである。
前話で書いたやっちまった彼のいたラーメン屋で、私は麺友さんに記帳をしてもらっていた。なので開店十五分前到着なのに五番目に入れたのである。
「それって代表待ちと同じじゃないか!」という意見もあるかもしれない。
しかし、整理券も記帳も、ひとりが順番を取れる人数は制限されているのがほとんどなのだ。
たとえば整理券なら一枚でふたりまでとか、記帳もひとり四名までとか、決まっていることが多い。記帳では制限を設けていないラーメン屋もあるが、そこはあくまで客の良心的な範囲で。あまりにも横暴な客が増えれば、その後は制限されることになるだろう。
整理券は手作りの整理券を配る店もあれば、エアウェイトという発券機をつかっている店もある。このエアウェイトが使いやすく、発券された整理券のQRコードをスマホで読み込むとLINEで残りの人数を教えてくれたり呼び出しまでしてくれるのだ。
この『整理券』と『記帳』だが、整理券の配布や記帳ボードを出す時間までは通常の並びと変わらないのでそこだけは注意が必要である。その後は並びから離れどこで何をしていても構わないが、予定時間十五分前には店前に戻っていた方がよいだろう。
最後に最近有名店の間で増えてきた『予約』である。
一言で予約と言ってもいくつか種類がある。
メリットは今まで並んでいた何時間もの時間がほぼ不要になること。
よく聞くのがラーメン屋に限らず飲食店向けの予約・優先案内サービスを提供するテーブルチェックである。こちらは予約時におひとり様三百九十円払えばもう並ぶ必要はない。時間をお金で買っている、と言えばわかりやすいだろうか?
それと同じような予約システムを個人ラーメン屋がやっている場合もある。こちらは店によって様々だが五百円程度のチケットを来店時に購入し、購入当日もしくは後日、SNSのDMで予約したい日時を決めるといった感じだ。
ただし、どちらも予約料金は飲食の料金に含まれないので注意が必要である。
しかもテーブルチェックは結構高額なキャンセル料を取られるので予定があやふやな場合は利用しない方がいいだろう。
中には予約料金が一切かからないネット予約システムを導入しているラーメン屋もある。しかも当日朝まで無料キャンセル可能だったりと予約しやすいシステムもある。
一言で予約と言っても完全予約制の店もあれば、一時間枠で予約と並びを平行で受け付けている店もある。
このような様々な予約システムを導入しているラーメン屋は、まず間違いなくSNSの公式アカウントでどんな予約システムなのかを発信しているので必ず確認が必要だ。
目当てのラーメン屋が『並び』なのか、はたまた『整理券や記帳』なのか、もしくは『予約』なのかだけで、ラーメンの食べ歩きを経験したことがない人からすればここまで複雑なのである。
さらにラーメン屋には他の飲食店ではあまり聞かない大切なルールがいくつか存在している。
これはラーメン屋にとって死活問題であり、それが守られなければ最悪店がつぶれてしまうほどの大切なルールである。
次に紹介するのでぜひ覚えておいてもらいたい。
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