第11話
この後どうする?
音ちゃんの口からその言葉が出た時、わたしは嬉しくて感動して、胸がいっぱいになって――にやけてしまった。
「なんでにやけてるの?」
「音ちゃんはもっとわたしといたいってことでしょ?」
あ。
「は? 別に」
そう言う音ちゃんは、今日何度目か分からないしかめっ面をする。
思わず考えていたことが口に出てしまい、恥ずかしくて怖くて、もし音ちゃんが帰るって言ったら、立ち直れなくなってしまう。
「わっ、わたしはもっと音ちゃんといたいよー」
「また適当なことを……」
「だって楽しいもーん」
「分かったから。どこ行く? 電気屋?」
もうこの話題はどうでもいいという風に、音ちゃんが強引に話を打ち切る。わたしとしても助かった。
たとえ本心でも、それを茶化して言ってしまうと苦しくなってしまうことを学んだ。
◎
一瞬、加賀野に私の心を見透かされたんじゃないかと肝を冷やした。あそこで反射的に否定してしまったけど、うん、たった二文字で答えることができたのなら、なにかが変わるのだろうか?
たとえ冗談で言ったのだとしても、それが冗談である程、私の心は押しつぶされてしまう。
だからこれ以上適当なことを言われる前に話を打ち切った。
――でも、思考は止まらない。
まだまだ一緒にいたい。加賀野と。
当たり前のように隣にいる関係になりたい。今は離れていくとは思わないけど、そんな悠長なことを言っていると、すぐに三年生になってしまい進学だ。
家もそこそこ近いと思うから、会おうと思えば会えるのだろうけど、漠然とした不安が拭えない。
これから先も、ずっと一緒にいるなんてできるのだろうか。
目的の無くなった今の私には、不安と恐れしか残されていない。
いつか必ず、隣を歩く彼女はいなくなる。
今なら、また明日、でもそれが時間が経つにつれ、また今度、に変わる。そして最後は、それすら無くなる。
急に私の心はどうしたんだろう。
もしかして――を抱いた結果なのだろうか。得る喜びとそれを失う哀しみ、文字列が織りなす世界で散々見てきたこと。
彼女の空いている手を取りたい、私以外を掴めないように。
もしかして、ここで大きな一歩を踏み出したのなら、その手を取ることができるのか、それとも、二度と取れなくなるのか。
不安が不安を呼び、今を覆い隠す。
こんな感情を抱くのなら、断ればよかった。
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