第21話

そして1日は終わり、早く家に帰って皐月に詳細を話そうと帰り支度をしていたまさにその時。


廊下から、きゃあ、と黄色い歓声があがり、その声は5組に近づいていた。



「六道 李織さん。いる?」



私を呼んだ。そのことにクラスはザワザワと騒がしくなる。


──何で来るのよ。

私は聞き覚えのある声にうんざりしながら入り口を見ると、伊澄副会長が立っていた。



ただでさえ生徒会は美形揃いなのに生徒会の中でもダントツ美形の伊澄副会長がこの5組にいるのだ。伊澄副会長の近くを通る女子たちは彼を見るとぽーっとした顔で通り過ぎるか、伊澄副会長をみてきゃあきゃあ言っているかの二択である。



「うちのクラスになにか用でしょうか。伊澄副会長」



伊澄副会長の目の前に立つのはこのクラスの委員長でもあるライ。



「うん、というか用がないと普通は来ないよね」



語尾に”こんなクラス”とつけられたように言われ、教室の空気は険悪になる。



「というかキミは何?久隆委員長。僕は六道さんを呼んだのだけれど」


伊澄副会長は口は笑っているが、冷ややかな目でライをみる。



「それとも何?久隆委員長。キミは六道さんと関係あるのかな?」


ライの神経を逆なでするような言い方をする伊澄副会長。



「おま……」


「なにか御用でしょうか。伊澄副会長」



私はライの言葉を遮るようにライと伊澄副会長の間に立つ。自然と伊澄副会長との距離が近くなり、伊澄副会長は私が来たことに満足したのか満足そうに笑うのが眼鏡越しに見えた。



「会長が呼んでるから、迎えに来たんだよ」


「それにしては、会長は居ないようですが」



私は少しあたりを見渡して皮肉めいて言う。それだけ生徒会とは関わり合いたくないのだ。できればこのまま帰っていただきたいくらい。回れ右!進め!とか言ったらどっか行ってくんないかな、なんて非現実的なことを考えるあたり私は疲れてるのかもしれない。



「いいから、生徒会室。行くよ」



伊澄副会長は半ば強引に私の持つ荷物を手に取り、そそくさと歩き始める。



「イオ」


「大丈夫ですよ。私に何かあれば咲蘭が黙ってないでしょうし。行ってきますね」



私はそう言うが、ライの顔は心配そうな顔のままだ。



「終わったら連絡しろ」


「……わかりました」



少し先で待っている伊澄副会長の方へと歩くと、伊澄副会長は満足したのか意味深な笑みを浮かべて歩き出す。



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