第2話 もう1組の兄妹

 は? 何の事? 


「知らねえよって顔してやがるな、でも俺は図書室できっかり見たんだぞ」


 図書室?…………あっ! 思い出した。

 陰キャな俺と違い誰とも上手く付き合える美沙希に誘われて本を探しに図書室行った時の事か。

 あれもこれもと本を持つ内に図書室は誰も居なくなったんだよな、確か。

 そして――

 

「きゃっ!」


 抱えた本を落としそうなった美沙希が姿勢を崩したんで、とっさに俺は手の本を床に落として妹を支えたんだよな。

 あの時、足に本が当たってスゲエ痛かった。

 そして――うん、そうだ、気付いたら美沙希の顔が目の前にあった。それも鼻と鼻がぶつかりそうな距離で。

 妹とこんなに顔近づけたの、小学生の低学年以来だった。

 しかしあの時、龍虎に見られてたのかぁ。


「おっ、その顔ようやく観念したか? あの時本の返却頼まれてよ、偶然見ちまったんだ」

「いや、あれは……」


 途中で口を閉じた。

 真実を言おうが相手はそう思い込んでいる。

 何を言っても無駄だ。

 

「それで、一体何なの?」


 その言葉に邪悪な笑みを浮かべると思われた龍虎が苦笑いを浮かべた。


「それがよ」


 一転、恐ろしい目つきになる。


「この事は誰にも言うなよ。臭わすだけでも言ったらお前も妹と付き合ってるのを完全公開してやるからな」


 お前も? どういう事?


「もしかして龍虎……」

「違う! お前と違って付き合ってなんかねえ! 妹が勝手に俺に惚れやがってんだよ!」


 時間にして1秒ほどだろう、俺は目の前がすーっと暗くなるのを感じていた。


つづく

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