恋愛呪縛
ライ・スシワシ KKG所属🐾
第1話
体育館裏。誰しもが告白場所として想像するところに私――東雲薫は立っていた。呼び出されたのだ。相手は、幼馴染の藤原北斗だ。呼び出された時間が刻一刻と近づいてくるたびに鼓動が高まっている。全身に熱を帯びていて、自分がストーブになったかのようにとてもあつい。
指定された時間になると、北斗が現れた。彼はなにか決意したかのような顔でこちらに向かってきた。彼の真剣な顔に私はドキッとした。もう何年も好きだった。彼と触れ合うたびに心が奪われていく。嬉しいときも悲しいときも一緒にいてくれた。そんなところに心を奪われてしまった。
「薫」
低音のボイスで私の名前を読んできた。
「えっと、話って何?」
「ずっと言いたかったんだけど、もう全部言うね。俺は…俺は薫のことが好きだ!」
初告白。それも好きな人からされた。心の中が幸福感で満たされて、ほわほわとする。
私は彼に『私も、回とのことが好き!』と言おうとした。
その言葉は次の言葉で消されたしまった。
「だから薫…俺のことを嫌いになって…」
「…え?」
耳を疑った。彼は何を言った?『付き合ってくれ』じゃなくて、『嫌いになってくれ』?どうして?なんで?
私はなんとか声を振り絞り、かすれたような声で理由を聞いた。
「…どうして?」
北斗は俯いていたがボソボソと言った。
「俺の一族にさ、昔人を殺した人がいたんだって。その人達から呪われているんだ。父さんも母さんも恋人とかじゃなくて政略結婚的で、お互いの理由を知っているからあまり関わらないようにしているみたいなんだ。覚えてるでしょ?俺ん家に遊びに来たとき、そうだったでしょ?俺はそれを昨日聞いたんだ…。『お前は誰かと好きあってはいけない。好き合うと死んでしまう。嘘だと思うな。実際に俺の兄さんが恋愛をして死んでいる。これは本当の話だ』って。だから俺はここで薫に気持ちを伝えた。俺を好きにならないでくれ…」
北斗は悲しそうな顔で説明してきた。
その悲しそうな顔には疲労感と虚無感を感じられる。
昨日は寝れなかったんだろう。苦渋の決断だったのだろう。
「…いやだ」
「え?」
私はいつの間にか口に出してしまったようだが、思ったことを溜め込めない。そのまま吐いてしまった。
「私は北斗のことが好きだった!なのに結ばれないなんてひどいよ!私は!!北斗のことが、好きなのに…」
「薫…」
心の感情が溢れ出てきた。
「…どうにかすることは出来ないの?」
「薫、俺がどうして生まれてきたのか不思議に思わない?」
「え?…あっ」
たしかに北斗が生まれてきていることが矛盾している。
そもそも北斗の祖先からずっと生き続けていることに疑問を持つ。
「俺の祖先や父さんも恋愛的に性的行為をするんじゃなくて、襲う的な感じで子作りをしていたんだって。それに気づいたから俺の一族はそれが代々行われているみたいなんだ。あとはわからない…」
「え?え?え?」
えっと?北斗をかわいがっていたお母さんも襲われるような形で?
情報が変な方向に行ったり来たりして混乱する。
「え?え?つまり、私も襲われるような形でやればいいってこと?」
「いやいや、俺そんな事あんまり好きじゃないからね!?」
え?今の会話だとそうしないといけない的な雰囲気だったんだけど…。
「もしかしたら蔵の文献になにかあるかもしれないから、今日俺ん家来ないか?一緒に探そうぜ!」
これから北斗を愛することもできなくなるのは嫌だ。
…まあ、ちょっと襲われる形も気になるけど…。
「うん!北斗と愛し合えるように、頑張ろう!」
「お、おう…////」
北斗は俯いて歯切れ悪くなった。
(クッソ…可愛すぎる…!)
そんな事を考えているとは知らずに私は
(はっ!?待って、これってもしかして…家デート!?)
などと乙女心前回にして妄想をしていた…。
恋愛呪縛 ライ・スシワシ KKG所属🐾 @komen114
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