異世界の殺人者
わたなべよしみ
第1話 異世界転生
突如、響き渡る爆発音と共に視界が真っ白になった。
如月翼は、最後に見たのは騒然とした仲間たちの姿だった。修学旅行からの帰路、バスは平穏そのものだったはずだ。それが一瞬にして無に変わる感覚——それ以外、何も覚えていない。
気がつくと、翼は眩しいほどに真っ白な空間に立っていた。足元も、頭上も、全てが光に包まれている。仲間たちの声が聞こえ、翼は急いで周囲を見渡す。
「ここ、どこなの……?」
天野千景の冷静な声が、沈黙を破る。彼女の目は鋭く輝きながら、周囲を観察していた。
「俺たち、死んだのか?」
赤城陽斗が混乱した様子で言葉を紡ぐ。
「いや、死んだ……けど、ここは地獄でも天国でもなさそうね。」
白雪美咲が優しく微笑みながら言うが、その顔に明らかに不安が混じっている。
すると、突然、天から威厳に満ちた声が響き渡った。
「ようこそ、選ばれし者たちよ。」
7人全員がその声の方を振り向くと、眩い光の中から神のような存在が現れた。その姿は人の形をしているが、細部は光に包まれていて見えない。
「お前たちは事故で命を落とした。しかし、特別な資質を持つお前たちを、新たな世界を救うために選んだ。」
「選んだって……どういうことだよ!」
陽斗が怒りに満ちた声を上げる。
「そのままだ。お前たちは新たな世界で、『救世の勇者』として試練を与えられる。そして、その試練を乗り越えたとき、世界は救われるだろう。」
「試練って……救うって、そんなこと……!」
白雪美咲が困惑の表情を浮かべたが、翼が一歩前に出る。
「聞きたいことは山ほどある。でも、一つだけ教えてくれ。この選択に、俺たちの意志は関係あるのか?」
翼の問いに、神の声が少しだけ柔らかくなる。
「意志の有無は問わない。しかし、試練に挑むお前たちに祝福を与えよう。それが、この力だ。」
そう言うと、神の手が光り、7つの輝く玉が彼らの前に浮かび上がった。各々の玉は、それぞれ異なる色と輝きを放っている。
1人ずつ、玉がその手に吸い込まれていく。翼には黄金の輝きを放つ玉が、千景には深い紫の玉が。それぞれの玉が身体に吸収されるたび、彼らは体内に異質なエネルギーが流れ込む感覚を覚えた。
「それでは、行くがよい。」
神の言葉と共に、彼らの体が光に包まれた。次の瞬間、翼は強烈な浮遊感とともに視界が暗転する。
目を覚ましたとき、彼らは荒れ果てた大地に立っていた。背後には燃え盛る城、前方には無数の魔物——そして遠くに見える人々の絶望の表情。
「ここが……異世界か。」
翼は震える足で立ち上がり、仲間たちを振り返った。
「どうやら、歓迎されてないみたいね。」
千景が微かに笑いながら呟いた。
こうして、7人の高校生たちの異世界での冒険が始まった。
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