第4話ルカの過去


ルカ・エルサルは、「サンブック」の小さな町で育った。彼には両親や生まれた家族の記憶が一切なく、自分の過去について知る唯一の手がかりは、幼い頃に育ての両親から聞いた話と、一枚の紙切れだけだった。


彼が養子として育ての両親の元に預けられたのは、生後間もない頃のことだった。ある雨の日、家の前に置かれたカゴの中に眠る赤ん坊――それがルカだった。カゴの中には彼を包む布と、小さな手紙が一枚添えられていた。


その手紙にはただ、こう書かれていた。


「ルカ・エルサル」


育ての両親は、この名前をそのまま受け継ぎ、彼を家族として迎え入れた。名前自体はサンブックでは珍しくない一般的な名前だったが、手紙にそれ以外の情報が書かれていなかったことが、ルカの心にわだかまりを残すこととなる。


ルカは育ての両親に大切に育てられたが、心のどこかにぽっかりと穴が空いているような感覚を抱いていた。他の子どもたちが自分の家族の話を楽しそうにする中で、自分だけが自分のルーツを知らない――それが彼を無意識のうちに孤独に追い込んでいた。


「俺の本当の家族はどこにいるんだろう?」

「名前だけ残して、どうして俺を置いていったんだろう?」


名前だけが手がかりであることは、ルカにとって大きな悩みだった。サンブックではありふれた名前であり、特別な意味を持っているようには見えなかったが、それでも彼はその名前に隠された何かを探りたいと願っていた。



異世界「リバディア大陸」に迷い込んだとき、ルカが名乗った「ルカ・エルサル」という名前は、周囲の人々に特別な反応を引き起こした。リーダーのエリザが驚いた表情でその名前を聞き返したのだ。


「エルサル……?その名前を聞くのは久しぶりね……」


エリザが語ったところによると、「エルサル」はかつて彼女たちの第二の故郷エルサルヴィルに伝わる名であり、彼らの歴史や運命に深く関係していた名前だった。ルカが持つ名前が、なぜ彼の知らない異世界で特別な意味を持つのか――それを知ることは、ルカ自身の過去を知る手がかりにもなるのではないかと彼は考えた。


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「異世界荒野の革命者 ~迫害された民と新天地を築く物語~」 @roiga

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