第2話 迫害される者たち
目を覚ましたルカが見たのは、広がる荒野と散らばる小さなテント群だった。そこにはぼろぼろの服を着た人々が集まり、皆、疲れ果てた表情をしていた。異形の姿を持つ者たちも目立つ。翼を持つ者や、長い尾を揺らす者、獣耳を立てた者――いずれもこの世界の「普通」ではない存在だ。
彼らは「サバサエル」と呼ばれるかつての砂漠の民だった。かつては高度な文明と学問を誇り、広大な砂漠地帯を拠点に繁栄していた。しかし、その知恵と発展は戦闘を至上とする「ワーティ帝国」の脅威となり、帝国の侵略によって故郷を奪われることとなった。
そのリーダーであるエリザは、彼を警戒しながらも集落へと迎え入れることを決めた。
「名前は?」
「……ルカ。ルカ・エルサル。」
「ふーん、変わった名前ね。どこから来たの?」
「サンブックランドってところから。……正直、ここがどこなのかもわからない。」
ルカの混乱した様子と言葉に嘘はないと判断したエリザは、一度彼を保護することを決めた。
ルカが名乗った「エルサル」という名前。エリザはそれに聞き覚えがあった。「エルサル」は、彼らが迫害を受けた隣国エルサルヴィルの名前に酷似していたのだ。
「その名前……偶然とは思えないわね。」
エリザは直感的に、ルカが運命的な存在である可能性を感じ取った。かつての故郷を奪われ、新天地を目指す旅の中で出会ったこの少年が、彼らの未来に何らかの影響を与えるのではないかと考えたのだ。
こうして、ルカは荒野の民の集団に受け入れられ、彼らの生活や文化、そして苦難を知ることとなる。エリザの決断が、新たな物語の幕開けとなった。
「私たちの祖先は、砂漠で知識と共に生きてきたの。でも、戦闘民族ワーティ帝国はそれを脅威とみなした。『頭の良さは、刃を持つより危険だ』と言いながら、私たちを追放したのよ。」
彼女の目には強い意志の光が宿っていた。
故郷を追われたサバサエルの民は、隣国エルサルヴィルに移住したが、そこでも迫害が続いた。エルサルヴィルの人々は彼らを「土地を失った落伍者」と見なし、奴隷のように扱ったのだ。耐えきれなくなった彼らは、自由と未来を求めて新天地を目指すことを決意する。
「だから私たちは、このリバディア大陸を目指した。だけど、ここでも先住民共が『外部者』として攻撃されるばかりで、まともに土地を確保することもできない……。」
エリザの話を聞いたルカは、怒りと悲しみを感じた。そして、彼女たちが唯一信じられるものは自らの意志だけであり、それすらも戦いの中で失われつつあることを悟る。
「……そんなの、おかしいじゃないか。生きる場所くらい、自分たちで選べたっていいだろう?」
思わず口にしたルカの言葉に、周囲の人々は驚いた表情を見せた。異世界から来た少年の言葉は、どこか新鮮で力強かったのだ。
「君がそう言うなら、一つだけ聞かせてほしい。あなた自身の居場所は、どこにあるの?」
エリザの問いに、ルカは答えることができなかった。それは自分自身がずっと考えていた問いだったからだ。
だが、彼の中に一つの決意が芽生える。「彼らと一緒に新しい未来を作ること」自分の居場所が見つからないなら、自分で作ればいい。そして、彼らと共にこの荒野で戦い抜くと決めたのだった。
こうして、ルカは「迫害される者たち」と共に新天地リバディアを目指す戦いに加わることになる。
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