凡人
才能がある人間というものは、本当に少し触れただけでわかってしまう。
今までも自分に才能があるとは思っていなかったが、本当に才能のある人に触れて初めて自分の中には才能があるはずと信じていたことに気づいた。
心のどこか奥底では自分にも文才があったりするんじゃないかという慢心を抱えていたのだ。でもなかった。全く。
それに気づいてしまってから全く食欲がわかないし気分が沈む。
思っているより大きなショックを受けてしまって、それにもショックを受けている。
辛い。とてつもなく辛くて、文章を見るたびに、書くたびに自分の平凡さに反吐がでる。
平凡平凡平凡平凡!
全ての文章が、言葉が、どこかで見たことのあるもので、どこまで行っても私は質の悪いコピーをすることしかできない。
今書いている面白みに欠けたこの文章だって誰かの模倣。
確かに模倣から新たな創造は生まれるけれど、私は劣化コピーを作るという段階より上に行くことができない人間なのだと思う。
所謂凡人だ。
やっぱり文章、感性、表現、全てに才能が詰まっていて、もちろん努力もしているのだろうけど、でも努力だけでたどり着ける境地ではなかった。
ああいうのを世間は天才と呼び、本人はそれを自覚しない。
あんまりじゃないかと思う。
まあ大人になる前に体験できてよかったのかもしれない。
数十年かけて作り上げたプライド、慢心をへし折られるよりはマシだっただろうから。
それにしてもショックだ。
ああどうしたって私に光るものなんぞなく、原石を磨いているつもりだったけれど実際はただ成形された石ができただけだった。
受け入れ難い。現実の残酷さに慣れない。
多分、挫折というものはこういう味がするのだろう。
辛い。あまりにも辛い。悔しい。悲しい。羨ましい。嫉妬。絶望。
顔が歪んでいくのを感じる。
どうしようもない。私は凡人だった。
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