第236話 攻略メンバー決定?

 とりあえず、数少ない人タイプの仲間に声をかける。


「あー……見た目だけなら、インクとサクはいけそうか?」

『は、無理無理、ムリです! 俺、そんなに高い戦闘能力ありませんからー!』


 影兎シャドウラビに踏みつけられて突っ伏していたインクが、バッと勢いよく起き上がって全力で拒否した。

 ……お前、そんな抵抗できる力があったんだな。


 影兎シャドウラビたちは『わあ〜!』『バッてとんだ〜』『もういっかいして〜』と楽しそう。

 そのせいで、インクはまた踏みつけられて、『ぐえっ』と呻いてる。憐れなやつ。


 インクたちを苦笑しながら見ていると、サクが軽食を手に近づいてきた。

 サクにも事情を話して、どう思うか聞いてみる。


『んー……マスターのご要望なら、できる限りがんばりますが、ちょっと難しいかもしれませんねー。冒険者に出会ってしまったら、絶対に魔物だとバレますよー』


 肩を軽くすくめて、サクが答えた。

 操人形マリオネと違って、サクたちは魔物らしい気配を隠すのが難しいようだ。

 俺から見ると、ほぼ人間な見た目なんだけどな。


「そうなのか……」

『出会った人みんなを魅了して、私たちの奴隷にしてもいいなら、構いませんけどねー?』

「怖っ」


 急に女夢魔サキュバスらしさを見せるなよ。

 うふふ、と妖しい笑みを浮かべてるサクから、少し距離を取る。


 たまにダンジョン内でサクに殺られる冒険者たちの姿を見てるから、こんな色っぽい顔をされても、恐怖しか感じねーよ。


『マスター、新たな魔物を召喚するのはどうにゃ?』

「えー……操人形マリオネ並みに人に紛れられて、かつ強い魔物なんて、創造しなくちゃ見つからないと思うぞ?」


 ミーシャに提案されて、一応タブレット端末で確認してみたけど……うん、やっぱり既存の魔物じゃ無理だな。


 そもそも人タイプの魔物っていうのが多くないし、そういうのは強さと比例して存在感があるから、確実に魔物だとバレる。


 かといって、魔物創造には基本的に既存の魔物を召喚するより多くのDPを消費するし、それに強さを上乗せしたら、DP消費量がとんでもないことになる。


 今の状況ならそれもできないことはないけど、邪神がいるところに行くために、再び一から魔力を集める必要が出てくるだろう。

 そこまでして、このダンジョン(仮)を攻略する必要があるのか、微妙である。


 考え込む俺に対し、今まで黙っていたアリーが、不意に口を開いた。


『別に人タイプをわざわざ召喚しなくても、影兎シャドウラビたちの能力でリルたちを操人形マリオネの影に潜ませて、戦うことだけやってもらえばいいんじゃないかしら? 他の冒険者がいるところでは、操人形マリオネがソロ冒険者として振る舞って戦闘を避ければ、問題なさそうだけれど』


 その案に、俺は「なるほど……できる、か?」と実現可能性を考えながら呟く。

 視界の端で、リルの目がキラキラと輝いていた。


 このところずっと地獄の穴攻略をしてくれているけど、まだ疲れることも、戦い飽きることもないらしい。

 こんだけ体力があるなら、普段は相当ヒマして体力を余らせているのだろう。


『え、それ、俺がヤバいくらい強い冒険者だと認識されちゃいますよね……?』


 操人形マリオネの顔が引き攣っている。

 不相応な評価って、ちょっと嫌だもんな。余計な厄介事がやってきそうだし。


 でも、アリーの案は、今のところ俺の中で一番良い方法である。

 これがイヤなら、操人形マリオネが良い案を出してくれ。


「その迷宮都市で冒険者ギルドに依頼達成の報告をしなければ、あんまり知られないんじゃないか? 中で出会った連中から噂が広がるかもしれないけど、ササッと調査して、以後迷宮都市に行かなければ、噂なんてどうでもいいし」


 俺が説得してみるも、操人形マリオネは『えー……でもぉ……』などと悩んだ様子を見せる。だが、最終的に渋々と頷いてくれた。


『……わかりました。それで行けるかわかりませんが、とりあえずやってみましょう』


 俺は操人形マリオネの返事を聞いてニコリと笑い、あぐらをかいた脚を叩いて、気合いを入れた。

 方針が決まったなら、さっさと動き出そう。時間は有限だ。


「よしっ。んじゃ、当面の方針決定だな。影兎シャドウラビ一体が運搬役で──」

『『『ボクたちもたたかいたい〜!』』』


 インクの上で跳ねていた影兎シャドウラビたちが、勢いよく近づいてきて『マスター、おねがい〜』と甘えてきた。目がウルウルしてる。

 か、かわいい……!


 ……一瞬もふもふに負けた精神を咳払いで立て直し、影兎シャドウラビたちを見つめた。


 お前たち、インクで遊んでて、こっちに関心がないように見えてたけど、ちゃんと聞いてたんだな? 偉いぞー。


「おっけー。んじゃ、影兎シャドウラビたちも戦闘要員で」

『『『わ〜い!』』』


 両手を上げて喜ぶ影兎シャドウラビたちの背後に、呆れた顔のミーシャの姿が見えた。


 結局もふもふに負けてるじゃん、って?

 影兎シャドウラビは戦闘能力も高いんだし、問題ないからいいじゃん。


 決して、可愛い影兎シャドウラビたちの望みを拒否できなかったわけじゃないんだぞ。

 ……可愛さに負けた可能性がまったくないとは言えないけど。


「リルも頼むぞ」

『任せてー!』


 尻尾を振ってるリルをワシャワシャと撫でて、「人に存在がバレないように!」と念押しした。


 姿を見られたとしても、一瞬だけなら幻覚ってことで誤魔化せるかな。ヤバイときには、サクたちを派遣して、洗脳的なことをするのも辞さないぞ。

 そんな事態は起きてほしくないけど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る