第169話 勇者一行の挑戦⑪

 降り注ぐ矢のトラップをほうきの一閃が払い除ける。


[やっぱり、ほうきは最高だね!]

[……お前なら、ほうきじゃなくてもそれくらいできるだろ]

[槍で対処した方が効率いいと思うわよ……]


 嬉々とした様子でほうき無双をしている歩夢に、ドロンとリーエンは死んだ目をしてる。


 でも、そんな二人も、すべてを歩夢任せにしないで、それなりに活躍してるんだ。


 ドロンは解除可能なトラップを見つけると、サッとスキルで片付けようとして──


[おっと……これは発動させる前に無効化した方がよさそうだな──『ピカッと解除! アクハムニナーレ♪』……ぐぁっ……]


 なぜかキャピッと可愛い詠唱を決めポーズ付きですることになってorz状態になってたけど。

 魔法少女装備が強制的に詠唱をチェンジしてるらしい。発現する効果自体は変わらなくても、ドロンの精神に深刻なダメージを負わせてる。


 また、リーエンは迫りくる壁に挟まれそうになった時、駆け抜けるためにスピードアップする魔法を使ってみんなを援助しようとして──


[このままじゃ間に合わないわっ! ──『みんな、全力で駆け抜けるんだぷぅ! 疾風ハリーアップ』ぷぅ!]


 という感じで、変な語尾で喋ることになっちゃって、スペースキャットみたいな顔になってた。


 使い魔ってそういう口調なんだー、とリルが感心してたけど、たぶん今回限定だと思うぞ。


 つーか、使い魔に変身したからって、スキル使用時のセリフが自動変換されるのは怖い。だって、それは自分の意思に反した言葉が口から出てきてるってことだろ。



 ──まあ、そんな感じで三人は順調に(?)トラップ盛りだくさんの迷路を攻略し、ついに踏破した。


[やっと……終わった……?]


 迷路を抜けて歓喜の表情だったドロンが、自分の格好を見て固まる。


 うん、まだ魔法少女コスプレのままだよな。

 ごめん。最後のクイズゾーンも、制限がかかったままで取り組んでもらうように設定してるんだ。


 つまり、魔女(男)と魔法少女(男)と使い魔(可愛い)のトリオでこのままお送りします!


[へぇ、これが最後? クイズゾーンかぁ。今までと毛色が違う感じだね]


 歩夢は装備のことを一切気にせず、俺が用意した看板の文章を読んで、ふむふむと頷いている。

 ドロンとリーエンは、一度回復した生気を再び喪失させていた。


「二人とも、がんばれー」


 俺は声援を送る。

 二人の思いは理解できるからこそ、憐れみを感じて涙が出そうだ。

 決して笑いすぎたせいじゃないぞ。確かに、ドロンたちがキャピッとした感じで詠唱してる姿は面白かったけど!


[……解答って、あれですんのか]


 ドロンが一本道の先を見て呟く。

 そこにはデカデカと『◯』と『☓』が書かれたパネルがあるし、その使い方は説明せずとも明白だろう。


[そうだね。みんなで一斉に正解だと思う方のパネルを破って進めばいいみたいだよ]

[……外れたらどうなるのかしら?]


 嫌な予感がする、と言いたげにリーエンが尋ねると、歩夢がニコリと笑う。


[ここには書いてないけど、定番は泥か小麦粉、あるいは熱湯とかじゃないかな]

[定番ってなんだよ……お前の世界、こんなことが日常的にあんのかよ……]


 ドロンがドン引きした顔をしてる。

 でも、決して、パネルを破って進む形の二択クイズは、一般人が日常的にするものじゃないから! そこんとこは、誤解しないで!

 ……俺のせいで、地球の印象が凄いことになってる気がするなぁ。


 俺が乾いた笑いをこぼしている間に、二択クイズはスタートした。

 パッと現れた看板に問題が書いてある。


【第一問:このダンジョンに本拠地がある宗教とは『もふもふ教』である。◯か☓か】


 歩夢たちが無言で問題を見つめた後、意見をすり合わせることなく歩き始めた。もちろん、◯の方へ。


[せーのっ]


 歩夢の掛け声と共にパネルに飛び込んだ三人は、当然粉まみれになることなくクリアだ。

 ちょっと問題が簡単すぎたな。


【第二問:このダンジョンはマーレの町と契約を結んでいるため、勝手にダンジョンマスターを倒してダンジョンを破壊してはならない。◯か☓か】


 再び◯。

 その後も問題が出される度に、歩夢たちは正解を選んでいく。ちょっとつまらない。


 でも、歩夢との思い出を問う問題の時は、俺も歩夢もなんだか懐かしい気分になって楽しかったし、ドロンたちも興味深そうにしていた。

 今の見た目は置いといて、やっぱり歩夢は俺の親友なんだなぁ、と再認識した場面だ。


[結構楽勝だな]


 クイズが残り少なくなったところで、ドロンがニヤッと笑って言う。もうクリアした気分になってるらしい。

 それはちょっと悔しいなぁ。


[そうね……でも、このダンジョンのマスターだから、最後にとんでもない仕掛けをしてくるかもしれないわよ?]

[ゲッ……イヤなこと言うなよ……]


 リーエンの言葉に、ドロンが顔を顰める。

 そんな期待をされて、俺は喜んだらいいのか嘆いたらいいのか、微妙な気分だ。性格悪いって思われてないか、これ?


[うーん、流星はいいヤツだけど、わりととんでもないことを平気ですることがあるから、否定できないなぁ]


 楽しそうにそんなことを言う歩夢に、俺は「えっ!? 俺、そんなタイプだったか?」と驚いてしまった。

 まさか歩夢にそんな評価をされていたとは知らなかったな……。


『マスターは凄いんだよ!』

『……まあ、否定はしないにゃー』

『マスターといっしょにいるのはたのしいもんね〜』


 リルたちがニコニコと笑ってる。

 歩夢の言葉って、俺を褒めてるわけじゃないと思うんだけど、リルたちにとっては好ましいものだったみたいだ。

 好かれてる、ってことでいいんだよな?


 俺が微妙な気分になっていると、歩夢たちが最終問題に辿り着いた。

 残念ながら、一度も小麦粉まみれにはならなかったよ。問題をもうちょっとひねるべきだったか。

 思い出に関する問題で間違えられたら悲しくなってただろうから、全問正解なのも喜ばしいことではあるけど。


【最終問題:勇者を擁する神殿の現在のボケカスな在り方は正されるべきである。◯か☓か】


 現れた問いに、歩夢たちが顔を見合わせた。

 そして、ニコリと微笑み一直線に進む。もちろん◯の方へ。


 俺の思いが問題に滲んじゃったけど、三人とも同感なことがすげぇ嬉しいよ。

 神殿ってボケカスだよな!


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