第253話 邪神をみつけよう!
リルとエンドによる攻撃後の惨状に、俺は目を覆いたい気分で「やっちまったなぁ……」と呟く。
これは早速、歩夢に回復魔法を使ってもらわなくてはならないかも。
……さすがに死んでないよな? 蘇生スキルは誰も持ってないぞ?
今この時ほど、邪神が本物の神であってくれと望んだことはない。だって、本物の神だったら、簡単には死ななそうじゃん。
『マスター……邪神の姿が見えなくなっちゃったよ』
「せやろな」
リルが困りきった様子で報告してくるので、俺は一周回って安らかな気分で微笑みながら答えた。答えになってないけど。
エンドはジッと遠く──攻撃前に邪神がいたところを凝視してる。
そこにいるの? 俺には見えないけど……溶けてない? 溶けた邪神って、絶対めっちゃホラーだから見たくないぞ。
『やりすぎちゃった? んー、でも、生きてる気はするんだよね』
エンドがそう言うと、しょんぼりしていたリルもピンと耳を立てて、邪神の気配を捉えようとする。
関係ないけど、真剣な表情のリルって凛々しくてカッコいいよな。
神の狼って書いて
『……確かに、いるね。たぶん息を殺して身を潜めてる』
「邪神がビビりまくってて草」
リルの言葉に、俺は思わず失笑した。
自分で一発は入れたいから邪神が生きててよかったとホッとした気持ちと、
とりあえず、リルたちの言葉が理解できず、状況がわかっていない歩夢とタイシに、俺が通訳した。
いちいち通訳するのちょっと面倒くさいな。翻訳機とか用意しておけばよかった。作れるかは知らないけど。
「──つー感じで、邪神は生きててどっかに隠れてるっぽい。やり過ごそうとしてるのかも」
[なるほどね……]
俺の言葉に頷いた歩夢が、満面の笑みを浮かべて胸を張った。
なんだか嫌な予感がするぞ……やり過ぎるなよ?
[──そういう時は、索敵スキルの出番だね!]
「あ、思ったよりノーマルそうなスキルだった」
ちょっとホッとしたのも束の間。
歩夢が[偽神探しのために鍛えてるんだよ]と言ったのが聞こえて、再び身構えた。
いろんなスキルがヤバいレベルまで仕上がってる歩夢が、わざわざ【鍛えてる】と言うなんて、凄い効果になってるんじゃないか……?
[ということで、早速……【
「待って? 索敵だけじゃなくない?」
歩夢がスキルを発動した瞬間、俺は悟った。
やっぱり勇者の能力が普通なレベルで収まるわけがなかったんだよ……。
心を無にして、その後の展開を見守る。
遠くの方──邪神を最後に見かけたところから少し離れた場所で、ボコッと地面が盛り上がった。
エンドによって破壊され、リルよって溶かされ、その後固まった硬い地面の下から、何かが体当たりをしているかのように、地面が揺れてひび割れる。
……なんか俺、この後の展開が読めたぞ。
静かに見守る。俺が今できることはそれだけだ。
[あれ? 出てこないなぁ。じゃあ、出てくるまで何度でもするよ。【
歩夢がスキルを連発し、その度に地面の揺れとひび割れが大きくなる。
スキルをかけている対象が近づいてきているのは間違いない。
このまま、歩夢のスキルによって邪神が現れるのを待つばかり……と思っていたけど、我慢しきれない子が味方にいた。
『じめんがかたすぎるんじゃないかな〜?』
『ボクたちがでやすくしてあげるね〜!』
『チカラをあわせて……いくよ〜!』
……うん、まぁ、いいんだけどさ。油断して怪我するようなことはないようにな?
全員で
まだ歩夢はスキルの連発を続けてるから、
『『『うさうさキック〜! ……あれ〜?』』』
その何かに、
[グホッ!? アバッ……ひぃ……グエッ!?]
見事にキックで蹴飛ばされた何か──白い塊らしきものが地面に激突し、歩夢が連発していたスキルによってすぐさま引き寄せられて宙を飛び、再び地面に激突して止まった。
倒れ伏している白い塊らしき何かは、人の形をしている。めっちゃボロボロだ。
「あ〜ぁ」
『にゃ』
思わず声が漏れた。ミーシャもポカンと口を開けている。
まさかこんな展開になるとは思わなかったんだよ。邪神の運が悪かった、としか言えない。
飛び出したところを
呆然としながらも、とりあえず白い塊──邪神を観察する。全然起き上がらないから、この隙を生かさないとって思ってな。
その結果わかった新事実が一つある。
ギリシャ神話の神の服みたいな格好は、神としての威厳を装うという目的以外に、たくさんの包帯をわかりにくくするためでもあったのではないか、ということだ。
だって、邪神のボロボロの服の切れ目から、皮膚を覆ってる包帯がたくさん見えるんだよ。
リルたちが向かう前から巻いていたはずだから、つまりこれって──
「……前回、トリクンを自爆させたことで、邪神はすでに満身創痍だった可能性が……?」
え、邪神って、その程度のことで怪我するのか?
ダサくね?
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