一流部隊の二流戦士

夢枕

シンクと戦う私たち

 人間社会が繁栄し平和に暮らしていた時、突然謎の生物シンクが現れ、人々を心の病が襲った。シンクが放つ瘴気に触れると心を病んでしまうのだ。


 シンクを討伐出来るのは特別な訓練を受けた魔導士だけだった。魔導士は地域ごとに配置された基地に駐屯しており、通報があれば討伐に行く。


 強力なシンクや新種のシンクと戦うのは、精鋭が集まる第一光描部隊だった。




 第一光描部隊、補助攻撃担当、皆川みながわ 明莞徠あいら

 私は名誉ある部隊に所属する、ちょっと他より強い魔導士だ。自分ではそんなに強いと思ってなかったけど、この部隊に配属されたってことはそれなりに実力はあるんだろうね。


 魔導士には色々な属性があるけど、大まかに七つ分けた中では、金属。心身ともに打たれ強くって、一つのシンクに力を集中してとどめをさす攻撃が向いている。

 これだけ聞くと最強と思うかもしれないけど、体内のエネルギーをとても消費する。また、瘴気の還元率が低い。


 瘴気の還元っていうのは、瘴気を綺麗にして、貴重で強力な魔力に変換すること。

 私たち魔導士は一人一個『還元機』っていう道具を持っていて、還元機がその人の体質に合わせて魔力に変換してくれるんだ。


 還元率が低いと還元できなかった分はそのまま外に漏れちゃう。


 貴重で強力な魔力を使った攻撃は他の属性と比べて高火力なんだけど……まあそう上手くはいかないよね。


 基地内を歩く私が窓口の前を通ろうとした時、その窓口から声をかけられる。


「皆川さん、新しい魔法を使えるようになったんですって? おめでとう!」


「ありがとうございます!」


 この人は阿賀野あがの 真理架まりかさん。水属性のベテラン魔導士。赤いフレームの眼鏡をかけた、青い髪の女の人。

 水属性はシンクが張る防御障壁を無効化する攻撃が出来る。そして速い! 還元するスピードも攻撃も。


 けど、保存しておける体内エネルギーや還元で得た魔力をあまり貯められない。


 エネルギーに空きがあれば代わりに魔力を貯められるけど、余った魔力は外に出ていってしまう。

 出ていった魔力はシンクに吸収される可能性があるので、魔法を使い続ける必要がある。


 効果的な魔法を瞬時に考えて使わないといけないから大変。


 私は阿賀野さんと別れて足を進める。


「んーなんかシンクが来そうだぞー」


 窓口の外に立ち、首を傾げた能代のしろ 実耶みやさん。阿賀野さんと同時期に配属された木属性の魔導士。緑色のウェーブがかった髪で金色の目の女の人。


 木属性は予知能力があって瘴気にあてられることが滅多にない。還元率が高くて、広い範囲に攻撃する魔法が得意。広範囲の攻撃で雑魚を一掃出来ちゃう!


 けど攻撃の威力は強くないから単独で行動する強力なシンクには苦戦しやすい。だからいつも誰かと行動している。


「また失敗した……皆川さんがこっち見てる……馬鹿にしてるんだ……」


 歩いた末に踏み入った部屋の隅で縮こまっているのは、酒匂さかわ 大夜だいやさん。ネガティブで、灰色の髪をボサボサのまま放置している。夜はあまり寝れないらしく、顔色が良くてクマがない酒匂さんを見たことが無い。闇属性。


 闇属性は動きが素早くて、攻撃力がとても高い!

 弱点は一度瘴気にあてられると心を病みやすいこと。


明莞徠あいらさん、怪我は大丈夫?」


 私が来たことに気付くと、矢矧隊長は書類から目を話して聞いた。


「はい、討伐にも行けますよ!」


 矢矧やはぎ 英騎えいき隊長は、この第一光描部隊で一番強い。

 綺麗な長い黒髪を金色の髪飾りで一つに束ねている。色白で目の色は群青色、それでえっと……とにかく全てが美しい!

 土属性だとわかったときはびっくりした。なんか意外だった。


 土属性は三分間だけ瘴気を通さなくするバリアを張れる。瘴気に強くて一つの敵を集中して攻撃することが得意。ちょっと金属に似てるね。


 弱点は……動きがとても遅い! 還元する量も少ない。

 矢矧隊長は普通の人よりちょっと遅いくらいだけど。


 連絡機が作動し、矢矧隊長が受話器を取る。


「……アイリス平野にシンク発見、行くぞ」


 私は矢矧隊長についていった。


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