27話 ダンジョンの4階にて
ダンジョンの4階。また、周囲の景色が切り替わる。
辺りを見渡すと、そこは砂色の壁に囲まれた、ドーム状の狭い空間だった。
壁に触れるとざらざらとした感触がして、ぱらぱらと剥がれた砂が地面にこぼれ落ちる。
光が入り込んでいる出口の通路は、砂の反射で目に優しくないほど輝いている。
暑いし、熱い。一気に汗が噴き出した。
シルクが裏地で汗をぬぐってくれた。「ありがとう」とお礼を言うと、フードが左右にそわそわ揺れた。
シルクのフードを目深に被って「このままでお願い」と頼み通路に出る。眩しすぎてわからなかったが、1歩2歩と進むと上り坂になっていた。
砂の粒で踏み込みにくい坂を、杖のようにリルを地面に突いて上る。リルにもお礼を言うと、キンッと返事をくれる。
眩しい光を抜けて坂を上り終えると、丸い出口の先は一面に広がる砂の大地。
動かない太陽と雲の無い青空の下で、色濃い影を作っている岩場に、黒光りするボスの扉が見えた。
扉に辿り着くまでの間には、翼の生えた蛇の魔物、ワイアームがピィーピィーと鳴きながら、群れで上空を飛び回っている。
隠れる場所もなく、気候も厳しい。階層を跨ぐ度に、難易度が跳ね上がりすぎじゃないかなと、苦笑いをしてしまう。「そう思わない?」と同意を求めると、よくわからなさそうに体を傾けるシルクとリル。
夏の暑さで外に出るのをためらうように、出口で色々と考えていたけれど、動かないと進まない。覚悟を決めて足を進める。
砂地を歩くと、わらわらと襲ってくるワイアーム。翼を斬って落としてを繰り返していると、リルがモゾモゾと動いて、あっという間に手から離れて飛んでいった。
そのまま空中をビュンビュンと飛び回り、ワイアームの翼膜をスパスパと切り裂いて落下させている。
なるほどなーと思いながら、ナイフを抜いてトドメを刺していると、シルクとの出会いを思い出す。周囲を音撃で牽制しているシルクに聞いてみると、あの時の再現なのかふるふる震えた。
そこからは同じことの繰り返しで、リルが落としてトドメを刺していく。
しかし、深い階層では回復薬なども落とすらしいが、ここでもやっぱり食料ばかりだった。
しかし、これは確かに、1人と魔物の私達はともかく、他の冒険者には辛いだろうと予想する。
人数がいれば物資には神経質にならなければいけないし、環境は厳しく敵も一気に強くなる。先に進めないストレスと、戻ると1階からになるプレッシャー。
仲間割れも多そうだ、そう思いながら、およそ半日ほど先に進み続けると、ようやくボスの扉前に着いた。
安全地帯にテントを張って、休憩をしながら考える。
戦い方や連携を実践で強化できた。これ以上、長々とダンジョンにいる理由はあまりないと思える。
暑いのは面倒だけど、敵がわらわらと寄って来るこの環境を利用して、できる限りレベルを上げたら脱出しよう。
そうシルクとリルに伝えると、ふわふわピョコピョコと弾んで了承の反応が返ってくる。これは公園で遊んでいた子供が、家に帰ると言われた程度の反応かな。
しばらく休み、群がるワイバーンを落として倒すを繰り返す。
日が沈まないので正確にはわからないが、3日ほど繰り返していると、レベルが上がらなくなってくる。
休んだらボスに挑んで外に出ようと、テントで休むことにする。
外に出たら旅の続きに出ようか?街を見て回ろうか?と話しかけると、そわそわピョンピョンと反応するシルクとリル。その反応にくすくすと笑ったら、ぽふぽふツンツンと甘えてくる。
程よくリラックスできたので、休むことにした。
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名前:エル
種族:人間
レベル:24
職業:吟遊詩人
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名前:シルク
種族:ラップクローク
レベル:23 / 30
職業:楽師
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名前:リル
種族:ダンシングソード
レベル:23 / 30
職業:舞踏家
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