26話 ダンジョンの3階には

 ダンジョンの2階で目を覚ます。

 安全地帯の淡い光が、テントの陣幕にぼやりとスクリーンを作っている。

 シルクとリルを起こして荷物をまとめて、支度ができたら出発だ。


 既にボスと戦う準備はできているが、1日で仕上げた突貫工事。

 そのまま向かうには危ないかなと、スケルトン先生達に改めて手合わせを願って、しばらく戦い方の調整をしていく。ちょっとした連携の修正はあったものの、大きな問題はなかった。

 これならと、黒光りの扉に向かい先に進むことにする。


 石造りの壁に囲まれた、相変わらず大きい扉を開けると、部屋の中央に一体の鎧騎士が蹲っている。

 剣を抱えているため警戒しながら前に進むと、鎧騎士は立ち上がり、骸骨の顔を向けてきた。


 走り出すのは同時。1合、2合と打ち合っていく。

 骸骨騎士の覚えがある剣筋に、演舞のように打ち合いが続く。それはスケルトン先生達と同じ剣術だった。

 骸骨騎士の動きは速いが、これならいけると、振りに合わせて避けて斬る。

 音撃も重ねて当てていくと、ほどなく骸骨騎士は倒れ込み、消えていった。


 ゴトリと、消えた骸骨騎士のいた場所に、宝箱が現れ落ちる。

 それを開けてみると、箱の隅に指輪がポツリと転がっていた。

 何か特殊な効果があるのだろうか。ダンジョンから出たら調べてみることにする。


 この流れならと、部屋の隅へと振り返る。予想通り、上りと下りの階段が出現していたので、下り側を降りていく。すると、再び視界が切り替わった。


 気付くと、そこは広い砂の地面。

 2階までの小部屋ではないことに、少し動揺する。空まで見える事に解放感があったのか、リルとシルクが飛び回り始める。

 砂の淵に水が押し寄せては戻っていく。その向こうは青く広がる水。これが話に聞いた海というものだろうか。

 反対側を振り向くと、そこは森の絵が描かれた壁になっていた。この砂の地面を進めということらしい。


 辺りの様子を伺っていると、ガリッガリッと音が聞こえてきた。そちらを見ると、硬そうな岩を突いているリルと、その周りをくるくる飛び回るシルクがいた。

 石の下から、虫のような足が出てきては、リルに突かれて引っ込んでいく。これは遊んでいる……。


 この、もそもそと足の出る岩が敵だろうと、図鑑を調べてみると「オオヤドカリ」という名前だった。隠れて不意を打つ習性があり、硬い殻に籠って防御し続ける魔物。

 今までの傾向から、ダンジョンのボスは、その階層の敵が強くなった魔物のようだし、色々と試していくことにする。


 リルに突かせて、足が引っ込んでいる間に殻をひっくり返す。起き上がれない状態で炙ると倒せた。

 他にも地面に凹みを作るとすっぽりと嵌って、もそもそと逃げようと、もがいている内にも倒せる。

 しばらく戦っていても、籠らせている間に倒すことが出来てしまう。


 どんどんと可哀そうになってくるので、不意打ちを受けないようにしながら、先に進むことにした。シルクとリルも、検証しているうちに飽きたらしく、警戒している間、大人しくしてくれた。


 安全地帯で休憩をはさみ、相変わらず大きい黒光りの扉を開くと、砂の地面から石造りの部屋へと変わる。

 ボスは、オオヤドカリをさらに大きくしたヤドカリ。地面が石になると、ひっくり返しやすくて、すぐに終わってしまった。

 これなら砂の方が良かったのではないだろうかと訝しむ。シルクとリルも殻をガリガリぺしぺし叩いていただけなので、本当に終わったのかと、きょろきょろ辺りを見回している。


 宝箱が出ているので、ボスは倒せたのだろうと、シルクとリルに声をかける。開けてみると、今度はイヤリング。

 少しはお洒落でもしろというのだろうか。シルクが私の耳を覗きこんでいる気配がするので、見せてあげた。このイヤリングも、脱出後に効果を調べてみよう。


 部屋の隅に、3度目になる階段の出現を確認して、下り階段を降りていくことにした。


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