第5話「根底の底力」
「白瀬よ」
「なんでしょう」
「まるで今日も差し障りない日々だな」
「いいじゃないですか、それが最も謙虚な日々を育むのですから」
「そうか、ならばドラマを見るか」
「事実そうして、脇見が堕落につながるのですよ」
「七神の大罪は知ってるね?つまり怠惰もまた神の心得なのさ、故に満場一致とは行かずとも、気高い風情は担えるのさ」
「そうして、言葉を使えば、誰もに威信を通せるなどと思わないでくださいね」
「はは、ならば誰のために生きてるんだ君は、場の空気に同化しても、たかが知れてる、ならば脳髄をふるって、威信から大価を得た方が幾分素敵だと思うぞ」
「そうですね、では、意欲新たに切り出しますが、先生って怠けて何がしたいんですか」
「はは、面白い、将来を見据えた回答は好きだよ、君が言葉を使うように、心もまた、己の中に、猜疑心を見る、つまり怠惰とは、心の疲れであり、現実からのプラグアウト、つまり真意は休みたいとか、距離を置きたいの、リラクゼーションに近いな」
「そうですよね、やっぱり先生ってお上手なこと、でもそれさえセオリーであり、己の学識に相手が靡くとは限りませんよ、言わば、私は納得させても、心まで屈してはいないという、異句同音ですかね」
「そうか、それならば心まで虜に出来ない、その異端さを垣間見て、そこにつけ込んで、良しとしている君のほうが、無法者だよ」
「しかしてそれでも、伝え方は工夫できるはずです、言葉を換えれば、世界だって変わるでしょ?」
「はは、まるでおままごとだね、いつだって人の中に自身がいる、これを除いてしまえば、自己完結になる、つまりね、組する以上、饒舌であらねばならない、それは心理であり教鞭したい、心眼だよ、もっと見抜け、人の世界を見て、もっと考察しろ、それが真の心構えだ、誰も独りでに生きれない、だからこそ知恵をつけ、本意を正せ、それがせめてもの情だろ」
「そうですね、失礼しました、いつか先生と、ドラマを見ながら、笑って談笑したいです」
「あ、これドラマの話か、」
「ええ、そうですけど」
「まーしかし、いいものだ、テレビを見ながら自由に御託を並べて利便を深めることが出来て、実に成長の早い速談だね」
「ええ、ですね、でも先生はいつだって画面の向こうを見てるんですね」
「はは、まるでわかってないな、私はね、君を見てるんだ」
「またそうして愛でもてあそんでー、」
「そうか笑えるなら御の字だ、生きて尚、私は自身に君を重ねてる、これは愛だと思うのさ」
「ええ、いいですね、私だって思ってますよ、先生が好きだって思って毎日、生きてますよ」
「だだ甘だが、それもまた愛のなせるフレーバーだね」
「そうですね、いつか消える最後まで愛だけは世界において、巣立ちましょうね」
「はは、やぶさかでもない、ごもっともだ」
「ええ、では、」
「ああ、またドラマを見た後に、君を見つめるよ」
「ふふ、あまりにも甘いですね」
「いや真剣だぞ、本気だぞ」
「そういう意味じゃないです」
「なな、ま、しかし意思疎通もまた大切だな」
「ですね、いつか行きゆく果てに、愛以上に抱きしめます」
「ああ、期待してる」
「ええ、ご随に」
「ああ、君とまた会える日を祝して祝辞としよう」
「ええ、まだ生きるんですからね」
「はは、あたりまえだ、なんせ君がいるから私もまたこうして、謳歌できる、ゆえに生き恥さえも愛だというよ」
「はい、好きです」
「ああ、私もだ」
「ふふ」
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