第14話 エスカレーター
地下鉄へ向かう、長いエスカレーターを優子は下りのエスカレーターに乗っていた。
時間は深夜だ。
「このエスカレーター、すごく長いんだよな…。
仕事で疲れすぎてるから、歩いて下りたくないし…。
それにしても、遅い時間帯とはいえ、誰もいないなんて珍しいな…」
エスカレーターには、上りも下りも誰も乗っておらず、優子だけが乗っていた。
エスカレーターの、ゴウンゴウンという音だけが響いてる。
「なんか怖いなぁ…。
ん?」
上りのエスカレーターに乗った女に気づく優子。
『こんな寒い季節、薄いワンピースだけ着てるなんて…』
長い黒髪に、薄手の白いワンピースを着ている女。
長い髪に顔が隠れていて、表情は解らない。
誰もいないエスカレーターの空間で、その異様な格好をした女に、優子は不気味さを感じた。
その女が、だんだんと優子に近づいてくる。
そして、上りのその女と、下りの優子がすれ違う瞬間、優子はこの異様な女の顔をチラッと見た。
「!っ」
優子は驚愕した。
女の顔は、何もなかった。
青白い顔には
眉毛、目、鼻、口、全てが無かった。
いわゆる、のっぺらぼうだった。
『え?見間違え?顔が無かった…』
優子の全身に寒気が走る。
『なに?どういうこと?』
混乱と恐怖が優子の頭の中を駆け巡る
振り返ると、その女の姿は無かった。
『え?見間違え?』
優子が視線を前に戻すと、あの女が再び上りエスカレーターに乗って、優子に近づいていた。
「かっ、体が動かない!」
優子は動かない体のまま、その女が迫ってくるのを受け入れるしかなかった。
その女は、優子に近づくにつれて、優子の方に上半身を乗り出してきた。
「ひいいっ」
優子は動かない体を必死に動かそうとしたその瞬間、女の何もない顔が、優子の目の前に来た。
「オマエでいいや」
ゴウン…ゴウン…
優子は、エスカレーターの降り口で倒れていた。
優子の顔は青白くなっていて、顔の全てを失っていた。
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