第8話 拾った携帯電話


優美は夜、仕事を終え帰宅途中だった。

家までの道を歩いていると

「ん?」

優美は足下に携帯電話が落ちていることに気づいた。

拾ってみると、古い感じの折りたたみ式の携帯だった。

「今時珍しいガラケーだ。 どうしよう、近くに交番無いしなぁ。

このまま置いていくわけにもいかないし…」

優美は考えた末、とりあえず持ち帰り明日交番に届けようと思った。

「もしかしたら、持ち主から電話かかってくるかもしれないし」


家に着いた優美はテーブルの上に拾った携帯を置いた。

一人暮らしの優美は食事の用意をし始めた。

ブーン ブーン

拾った携帯が鳴っている。

気づいた優美は折りたたみの携帯を開いて電話にでようとした。

しかし、その瞬間電話は切れてしまった。

「あれ?切れちゃった。

でも、今の電話が持ち主の人か解らないから、かけ直してもなぁ…」

そう思いながら携帯を見ると、待ち受け画面が見えた。

拾ってから一度も携帯を開いていなかったので初めて待ち受け画面を見る優美。

画面には、薄暗い森の中の写真が映っている。

その森の奥に人影のようなものが見える。

「なんか…気持ち悪いな…」

優美は再び携帯を折り畳んだ。

その後、電話が鳴ることはなかった。

優美は風呂から上がって携帯に目を向けた。

「あれ?」

携帯は折り畳んで置いておいたはずなのに開いていた。

「変だなぁ。」

優美は携帯を持ち上げた。

「…?…」

待ち受け画面に写っている森の中の人影が少し大きくなっているような感じがする優美。

正確にはこちらに向かって近づいているような感じだ。

「気の・・せいだよ・・ね…」

少し怖くなった優美は携帯を再び折り畳んでテーブルに置いた。

ピロロロ

ビクッ

着信音に驚く優美。

「あっ、私の携帯か…」

鳴っていたのは優美の携帯だった。

「もしもし、あっ真也。

ううん、なんでもないよ。ちょっと驚いただけ…」

優美の彼氏からの電話だった。

携帯を拾ったことを彼氏に話そうとした瞬間

プツン  ツー ツー

「あれ?真也?もしもしっ」

電話が切れた。そして

ブツン

「えっ?」

部屋の電気が突然切れた。

「なにこれ…」

驚きが隠せない優美は、携帯のリダイヤルを押すが携帯の電源は切れてしまっていて反応しない。

「なんで?電池が切れたわけでもないのに…」

ブーン ブーン ブーン

ビクッ

優美は拾った携帯の置いてあるテーブルを見る。

閉じたままの携帯はバイブの振動でテーブルの上を動いている。その動きは優美に向かっている。

「いや…なんなの…」

優美は恐怖のあまり、座ったまま立つことができず、ただ自分に向かってくる携帯を見ることしかできない。

バカッ

閉じていた携帯がいきなり開いた。

「ひいっ」

携帯は画面が丁度、優美に見える角度に開いている。

「うそ……」

優美はゾッとした。さっき画面の中にいた人影がいなくなっている。

ピタッ    バイブの音が止んだ。

すると、携帯から男の声が聞こえてきた。

『俺は…そいつに…・・殺され…たんだ…』

優美は自分の背後に気配を感じ振り返った。

「いやああああああああああああああああ」

優美の真後ろには髪が長い、異様に首の伸びた女が立っていた。

『……そいつに殺されたんだ……』

ツー ツー ツー

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