第4話 二人乗り

二人乗り


義男は家に帰る為、自転車をこいでいる。

夜、十一時半を過ぎようとしていた。

今、義男の通っている道は森の中に作られたサイクリングロードだ。

昼間は木漏れ日が差す穏やかな道なのだが、夜は一転して不気味な道となる。

街灯も少なく、森を抜けるのも結構時間がかかる。

夜は普段、この道を使わない義男だったが、今日は帰りが遅くなった為、近道としてこの道を通っている。

「なんか怖いよな、夜のこの道って。

誰か通ってくれれば少しは安心なんだけどなぁ…」

実際、義男以外に人気は無かった。

「ん?」

前の方からこちらに向かってくる自転車のライトが光るのが見えた。

薄暗くてよく見えなかったが、どうやらスーツを着たサラリーマン風の男がこいでいて、

後ろに女性らしき人物が立ち乗りで後ろに乗っているようだ。

「サラリーマンが女の人後ろに乗せて、立ち乗りさせてるってなんか変な感じだな」

義男はクスっと笑ってしまった。

しかし、義男は何か違和感を感じた。

女の顔の部分がよく見えない。

確かに暗い道ではあるが、義男とその男の距離はだんだん近づいているはずなのに、女の顔は見えない。

女は立ち乗りをしていて、男の肩に手を乗せているのだから顔は見えるはずなのに。

そして、義男と男がすれ違った瞬間、義男は見てしまった。

男の後ろに乗っている女は首から上が無かった。

「そっそんな!」

義男は思わず自転車を止め、振り返った。

「!っ」

過ぎ去る男の自転車の後ろに女はいなかった。

「?、見間違えたのか?

いや、確かに女が乗ってた…」

義男は恐怖を感じて自転車をすぐこぎ始めた。

「この森を早く抜けないと…」

義男は恐怖のあまり思い切りペダルに力を込めた。

その時

ドンッ

「!っ」

義男の自転車の背後に何かが乗った。

ヒタ

青白い手が義男の肩に乗る。

「ひいっ」

義男は思わず振り返った。

「うわああああああああああああああああ」

義男の後ろに乗っているのは、さっき義男が見た女だった。

やはり首はない。

ガサガサガサ

自転車のカゴの中で何かが動いている。

「!っわああああああああああっ」

カゴの中には女の生首が入っていた。

そして首だけの女は言った。

「……どこに行こうかぁああああ……」









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