ヒロインのターンは続く

「ここで改めて皆様に宣言させていただきます。

アンヌマリー様は私の聖女としての力を引き出すために、敢えて自ら汚れ役を引き受けてくれたのです。

そうして、私を導き出してくれたアンヌマリー様を敬愛する心はあれど、恨むような心は一切ありません」


そこで一拍置いたリリアーテは私の手を掴みながら高らかと宣言する。


「ですから、私の望みは幼き頃より愛したアンヌマリー様の伴侶になり、私に人生を捧げてくれたように、私も人生を捧げて支えたいと願っているのです」


パチ、パチパチ、パチパチパチパチパチパチ!!


最初はまばらだった拍手が広間中に広がっていき、やがては大きな音となって広間中を包んだ。


その音の様子に圧倒されつつ周りを見れば、貴族達は涙を流し、時にその涙をハンカチで拭きながら拍手を続けていた。


更には攻略対象であったはずの3人組ですらも、涙を流して手を叩いている。


「アンヌマリー、どうやら僕は君のことを誤解していたらしい。

自分の人生を犠牲にしてまでの献身、とても真似できるものではない」


「ええ、色々と小賢しいことを考えてしまう僕には、貴女のように全てを投げ打つことは出来ないでしょう。

貴女こそ、リリアーテの伴侶に相応しい」


「まさかそんな子供の頃からずっと見守っていたなんてな。

悔しいが、お前達ほどお似合いのカップルはいないぜ!」


そんな事を言いながら完全にこちらをお祝いするムードになっている。


そんな彼らの目を見て私は気付いてしまった。


前世が終わる間際、やたらと流行っていた百合漫画を熱く語る友人の瞳と同じであるという事に。


まずい……この流れはとにかくまずい。


このままでは私の意思など関係なく、なし崩し的にリリアーテが私の嫁になってしまう。


「うおっほん!

皆様、少し宜しいだろうか?」


何とかこの状況を打破する術はないのだろうか?


そう考えていた時に突然大きな咳払いが広間にこだまする。


その音の主に目を向けてみると、そこには私の父であるライラック侯爵が前に出てきていた。


「おお、ライラック侯爵。

婚姻は当事者のみの話ではないからな。

ぜひ、貴殿の意見も聞かせて欲しい」


ここまでは流れに身を任せていた国王も、これは渡りに船とばかりに父に乗っかる事に決めたようである。

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