第2話
前回のあらすじ
なんやかんやで国際連邦対犯罪課第5隊に入った港ミライ。港ゲンに組織体系について教わる
僕の所属したこの組織、国際連邦はゲンさん曰く軍隊に近い自警団との事。大まかには特殊事象対策課、民間課、対犯罪課の3つに分けられている。
例を挙げるなら裕さんは民間課の一般的な警官。僕も所属しているゲンさんがの率いる対犯罪課第5課は対犯罪課ではあるものの特対(特殊事象対策課)にも所属しているという複雑な形だそう。
そして民間課だけは地域で分かれていて、それ以外の課は双方7隊まであるらしい。
それ以外にも医療専門部、本部防衛隊etc.etc.大体の組織図はそれで理解できるらしい。一般的に関わりはないが課長の提案・事案を通す上層部、その上にトップとして代々受け継がれている組織のボスがいるのだとか。
「大体の説明はこれくらいだな。何か質問は」
ゲンさんはそう尋ねる。それに対して僕は
「僕は何をすればいいんでしょうか」
ゲンさんは不思議そうに
「言わなかったっけ」そう返してきた。
「記憶喪失なので忘れました」
「ただ普通に忘れたというなら気にしないぞ」
「普通に忘れました」
「正直でよろしい」
これは正直に言ったと言えるのだろうか。
「君の仕事は君に関連しうる遺物の回収、伊藤のような犯罪者の逮捕・殺害、後は護衛とか治安維持だね」
「結構激務ですね」
「事務作業とかないから比較的楽だぞ」
ゲンさん曰く調査書とかは書かなくていい(正確には優秀な事務部に押し付けているらしい)し、朝礼といった物も特にはないそうだ。
「それはそれとしてそのゲンさんってやめてくれないかな」
「それはなんででしょうか」
「時代劇に出てきそうだからやめてほしい。理想は先輩、せめてゲン先輩にしてくれ」
まさか第4の壁を破壊してくるとは思わなかった。ゲンさ…ゲン先輩には明日隊員内で顔合わせをするとのこと。楽しみだ。
...............対犯罪課第5隊作戦会議室
「……誰もいない」
「俺たちがいるから良いだろ?」
「ゲン先輩とソラさんには毎日会ってるから顔合わせにはなりません。なんで企画したんですか」
ゲン先輩が言うには第5隊は僕を含めて7人で編成される隊らしい。隊長のゲンさんと補佐のソラさん、世界各地を飛び回っている3人の隊員と僕で6人。そして今から1人新人を迎えに行くとのこと。やはりこの顔合わせ必要ないのではないだろうか。
………国際連邦駅東口
「本当にここにいるんですか?」
僕たちは新人が到着すると言われる駅まで来ていた。
「まだ来ていないってさ。電車がクマと衝突して遅延してるらしい」
ゲン先輩は頻繁にあることかのようにそう伝える。後ろの方から大きな音が聞こえ、ふとそちらを向く。
「ヒャッハー!もう終わりなんだよなんな世界ィィッ!」
「こ、これは危険すぎる暴走トラックに轢かれそうな華麗なヒロインを間一髪の所で助けて恋に落ちる展開だ!ソラ、行ってこい」
「先輩。はっ倒しますよ」
ゲン先輩ソラさんはいつも通り戯れているがもう見慣れてしまった。しかし、いかにも危なさそうな暴走トラックだが、ここには僕たちを除いて人はいない。で、あるからして僕たちの方にあのトラックは突っ込んで来るわけだ。それよりもなぜ人気のないところで暴れているのだろうか。
「どけどけガキ供ォォ」
やはりこちらへ向かってきた。非常に危険な場面なのだが伊藤の件と比べると少し冷静になってしまう。あまりにもやられ役っぽいのだ。
僕がそんな事を考えていると上空から高速で人がトラックに向かって落ちてきた。
ドスン!
トラックが潰れそうなほどに大きな衝撃を肌感じた。その瞬間例のやられ役を除いてトラックを細切りにしてしまった。
「テメェ!何しやがるん…がっ」
落ちて来た白髪の彼はやられ役の首を強く踏みつけた。間髪開けずに彼は「黙れ」と言う。その光景を見ていたゲン先輩は彼に話しかける。
「アサヒ!よく来たな」
その声に気が付いた彼はチッと舌打ちをした。それが聞こえていたのかゲン先輩は苦笑いをしていた。おそらく彼に先輩は嫌われているのだろう。そんな二人を横目にソラさんは彼に近づいてこちらに来るように手招きしていた。
そんなソラさんを見ていた彼はいやそうにこちらに近づいてきた。ゲン先輩はそんな彼を逃がさんぞと言うように彼の肩を掴み、僕に自己紹介をするように伝える。
「伊藤旭だ。よろしく」
「よろしくおねがいしますでしょ」
僕は気にしないがソラさんが彼を叱る。ただ気になるのは僕と同じくらいの年齢だろうか。実際に自分の年齢を理解しているわけではないが、背丈が同じくらいだ。
「港ミライです。よろしく」
「あなたもねぇ」
ソラさんは最早呆れてしまっているように見える。しかし僕の返答を聞いた旭はいつものペースを取り戻したように横柄な態度を取り始めた。
「1日早く入っただけのお前を先輩だと思うつもりはねぇからな!」
バコッ
ソラさんが無言で旭の頭部を殴った。言葉使いに敏感なソラさんは耐えられなかったのだろう。そんな2人をゲン先輩は呆れたように見ている。
「僕は気にしていないですよ。これからよろしく、旭」
僕はそう言いながら右手を差し出した。それを見た旭はふんっとそっぽを向いた。その光景を見ていたソラさんと気配をさっした旭は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
…………ドートル 国際連邦駅東口店
一方そそくさとその場を離れた僕とゲン先輩は近くのカフェに来ていた。そこで僕は一つ気になっていることを聞いた。
「伊藤ってもしかして…」
「言いたいことはわかる。彼、旭は伊藤修也の遠い親戚だ」
ゲン先輩は語り始める。
「伊藤という苗字で下の名前も漢字の人間は大体親戚同士だと思っていい。家の風習である程度の年齢になると本家に集められて跡取りの護衛をすることになるんだ」
「なら旭はなぜうちに?」
「伊藤修也とかは分家の人間だが旭は本家三三男なんだ」
「そうなんですか!」
てっきり跡取りの護衛をしたくないからと予想していたがまさかの跡取り側であるとは思ってもみなかった。ゲン先輩は続ける。
「伊藤家は大きな御家な上跡目争いが絶えなくてな、暗殺や行方不明者も増え続けている。連邦も問題視はしているんだが武力と影響力の観点からあまり強くは出れていないんだ。そのような過程で彼は連邦に保護されるという形で命を守っている」
「そんな深刻な話だったんですね」
横柄な旭だが彼なりに悩んでいる事も多いのだろう。
「まあ、旭は堅苦しいのがだりぃ、って言ってたからそんな重くとらえる必要はないよ。実際に彼は跡目争いとは縁もない生活を送っていたからね」
先輩なりに緊張をほぐしてくれているのだろうか。それとも本当にそのような理由で連邦に所属することになったのかは分からない。しかし旭のあの態度なら言っていてもおかしくないのはたしかだ。いろいろと考えいる僕を気にしたのか先輩は
「そろそろあいつらの喧嘩も終わると思うから行くか」
時間にして20分先輩の言い回しからしてずっと喧嘩をし続けていたとでもいうのだろうか。
…………国際連邦駅東口
「ざっけんなクソババァ!」
「言って良いことと悪いことがあるって何度言えばわかるの!」
まだ喧嘩をしていた。最初の取っ組み合いの喧嘩とは違うが非常に激しい口論であると思う。人通りの少ない場所であったのが不幸中の幸いだろう。人通りの多い所では知り合いだと思いたくないほどである。そんな二人にゲン先輩は割って入った。
「時間もないからもう終わりだ」
二人の額を掴み、2人が一定の距離を取らせるような形にした。距離を離された2人は腕を車輪のように回して相手を攻撃している。
………対犯罪課第5隊作戦会議室
「かんぱーい!」
ゲン先輩の大きな掛け声と共に意味をなしていない顔合わせ会が始まった。本来ならここで互いの中を深めるのであろうが、空気感は最悪である。そんな中、旭が僕に質問をしてきた。
「お前、旧人類なんだってな。鍵は何だよ」
「能力?」
「お前それすら知らねぇのかよ。ゲン!こいつ教育受けてるんだろうな?」
「言っていなかったか?ミライは記憶喪失だ。それにそういったことはまだ教えなくていいと思ってさ」
「鍵」とはいったい何だろうか。旭が空から降ってきたり裕さんが受けたあの攻撃もその「鍵」というものの影響なのだろうか。そう考えている僕に旭は教える。
「鍵っていうのは2000年前の件以降爆発的に増加した超常現象のことだ。それより前にもいたらしいが明確な確証はない・親からの遺伝だったり認識によって差も生じるが大体はガチャみたいな運ゲーだ」
「補足をするとその鍵によって運命が大きく変わるといわれているから運命、普通に能力ともよばれていたりするぞ」
ゲン先輩に割り込まれたのが気に入らなかったのか旭は先輩のほうを睨んでいる。
「鍵、能力かぁ」
経験がないから確実なことは言えないが2人の言いようから運次第では空を飛んだりすることもできるのかもしれない。
「僕にはないんですか?そういった能力は」
好奇心のまま、そう質問する2人は渋そうな顔で同時に告げる。
「無理だ」「多分いける」
真逆のことを答えてきた。まず無理だと言った旭に理由をたずねる。
「自身の鍵について認識するのは大体10歳前後だ。お前の年齢は知れないが見てくれから俺と同じ16と仮定して考えると可能性は0だと思う」
一方ゲン先輩は。
「勘」
空を飛ぶのは諦めた方がよさそうだ。悲しみに暮れる僕にソラさんが方にポンと手を置き、伝える。
「世の中思い通りに行かないこともあるわ。そんな中どうするか考えるのはあなたでしょう」
その通りだと思う。裕さんの件で僕は学んだのだ、なにができるかを考えるのが大切だと。そう決意した僕にゲン先輩は言った。
「明日は旭と一緒に初任務に行ってもらう。行き先は運と金の国、コラティスだ!」
………謎の怪しい部屋
「失礼します」
ドアがギギギ開く。
「屋羅列か。例の計画は成功したのか?」
屋羅列「例の旧人類の暗殺はあと一歩の所だったの出すが上空から横槍が入ってしまい…」
謎の男「まあ良い。奴の出先をコラティスにするよう仕向けた。私が直々に出るとしよう」
第2話完
………あとがき
更新が遅れてしまって申し訳ありません。そんな中わざわざ第2話にまで足を運んでいただいてありがとうございます。
能力バトル物としてやっと話が進んでいきそうですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます