猫ラーメンのエッセイ

@Neco_Ramen

アライグマに会ったはなし

 この前、近所の公園に行ったら、池でアライグマが柿を洗っていた。うんうん、フガフガ言いながら、必死に柿を両手でこすっていた。私はそれを見て、「池って汚くね?」と思ってしまい、お節介を自覚しながらアライグマに話しかけた。

 「アライグマさん、池ってメッチャ汚いんで、そこで洗ってもあんま意味ないっすよ。」

 アライグマさんは手を止めて、柿を傍に置いてあったトレーに置き、ポケットからハンカチを取り出して両手を拭った。怪訝そうな表情で、僕の顔を見上げた。そしてトコトコと僕の近くまで歩いて近づく。

 「あのな人間さん。俺だってそんなん知ってるんだよ。後々ちゃんと洗うよ、蛇口で。でもさ、あるじゃん、昔からの癖みたいなさ、もうやる意味ないのに今でもやっちゃうとかさ。俺まだ『スマホ』じゃなくて『ケータイ』って言っちゃうし!鎌倉幕府もさ、1192年で覚えてるよ!」

 自分から声を掛けた手前、あんまり言いたくないけど、死ぬほど面倒くさい。うるせぇ。すごい剣幕で叫ぶし、なんかポッケに手いれてるんだけど、普通に小っちぇから全然怖くない。でも目とよく見るとめっちゃ狂暴な感じする。なんかムカついたから、言い返してやった。

 「こっちもさ、バカな小動物に対してアドバイスしてやったんだよ。な?だからそんな怒るなよ。あとさ、お前、柿洗う前に自分の身体洗えよ。くせえよ!?」


 やらかした。完全に言い過ぎた。初対面のアライグマに臭いと言ってしまった。すごい悲しそうな顔してた。なんか小っちゃい声で、「そんな臭いかな?」みたいなこと言ってた。僕は、どうしてか後戻りできなくて、「うん、くせぇ。お前くさいよ。」と畳みかけてしまった。アライグマさんは、「そんなこと言うなよ(笑)初対面だろ(笑)」って言いながら柿を抱えていなくなった。無理に笑っているのは明らかだった。


 ごめん、アライグマさん。これ見てたら連絡ください。謝りたいです。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫ラーメンのエッセイ @Neco_Ramen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る