引退勇者は結婚したい!
アライグマ
プロローグ
遡ること五年前。
車同士の衝突事故に巻き込まれて当時15歳の
エアトリア王国の第13代勇者として、魔王を討伐するため、パーティと共に難関不落のダンジョンへと何度も挑戦し、魔王城の最奥にて魔王を討伐した。
エアトリア王国での勇者凱旋パレードは三日間に渡り行われ、人々は勇者の活躍を讃え、後世に語り継がれる英雄譚となった。
実に五年に渡る大冒険であった。
目的のため、仲間のため、あらゆる欲を制限し、勇者キリヤは自らを賭して英雄となったのだ。
だが、勇者キリヤは燃え尽きた。
燃え尽き症候群で一ヶ月もの間、購入した屋敷の自室にてゴロゴロする生活をしていた。
「あー……結婚したい。ロリッ子エルフの女の子とラブラブデートしたり、ツンデレ悪魔っ子に膝枕してもらったり、人型精霊に甘やかされたい〜〜〜っ!!うわぁああああああっ!!」
「うるさいです。ご主人様」
ご主人様に対して無礼なこの女性は屋敷を購入した際に、雇ったメイドのアルメリアだ。
人類の救世主である勇者のメイドになれるということで目が点になるほどの多くの応募が来たが、キリヤが選んだのは最も態度が悪く最も顔の良い女の子を選んだ。
鎖骨まであるプラチナブロンドの髪とシャープな輪郭に大きい空色の瞳。
胸は控えめだがスラっとしたスタイルが美しい。
「な、なあ、もうちょっと優しくしてくれないの?俺、勇者だよ?」
「ニートの間違いでは?働け」
ひどい!世界救ったのに!
「やだよ!働きたくないの!疲れちゃったの!冒険者なんて可愛い女の子いないし、いても彼氏連れだし、浮気しまくりだし、誰も信用できないんだよ!!」
俺の中の冒険者像は可愛い女の子が僧侶とかやってくれたり、巨乳の女騎士と肩を並べて戦うのかと思ったら、横を見ればおっさん。前を見ればおっさん。後ろを見てもおっさん。ギルドの受付までおっさんという最悪な労働環境だった。
しかも、命をかけるような環境だからかパーティに女がいたらどんなに美人や明らかに貴族の雰囲気を醸し出すご令嬢も、髭ボーボーのおっさんや不衛生でガリガリなおっさんとも寝まくりである。正直萎えた。
それから俺の中での異世界冒険者像は全て水泡へと帰した。そして人間の女は信用できないと知った。
異世界詐欺だこんなの……。
こんなのってないよ!!
「ですが、働かなければ屋敷の維持は難しいですよ」
うん、それはそうなんだけどね。そんなにお金ないし。
「た、例えばアルメリアが代わりに冒険者で稼いでくるとかどう?」
「クズですね。嫌です」
だよねー。アルメリアは潔癖だ。
経歴でも前職は伯爵家のメイドだったが伯爵家の次男にセクハラをされた瞬間殴り飛ばし、解雇になったというめちゃくちゃインパクトのある経歴だった。
「なんとか女の子と清いお付き合いの上、結婚できないだろうか……」
「……」
そんなゴミを見る目で俺を見ないでくれ。
「……そんなに女の子と出会いたいなら女の子だけでパーティ募集したらいいのでは?」
「それだあ!!!」
小さいため息を吐きつつ提案するアルメリア。
しかし名案だ!男が混じるからダメなのだ。それなら俺一人だったら……?
ハーレムパーティができるのでは!?
「アルメリア!!お前は天才だっ!!」
俺は屋敷を飛び出し、冒険者ギルドへと駆け出す。
今度こそ始めるんだ、真の異世界の冒険を!
俺だけの異世界婚活生活を!!
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