狩人の詩
製本業者
狩人の詩 (序)
安息日前の満月の夜ともなれば、
祭りともなれば準備も大がかりになり、皆で大騒ぎするのだが、月に一度のお楽しみ程度であれば、それほど手間暇はかけられない。しかし「手間暇はかけたくないが、楽しみたい」という思いは皆同じである。そのため、町の宿屋へと人々が繰り出してくるのだ。
田舎町の宿屋ではおなじみの光景だが、
店内には、一仕事を終えた百姓たちが既に集まり、
そんな客たちの間を、ビア樽のような大きなお腹を前掛けで包んだ店主が、少女と共に注文を取りながら駆け回っている。
「おい、新婚なのにいいのかよ。で、何にする?」
「酒のお代わりだね。すぐに取ってくるよ」
「今日のおすすめかい? そうだな、ちょうど豚を捌いたところでね。
「珍しい
店主は調理の合間に配膳しながら、陽気に客たちに声をかけて回る。
やがて、食堂の中央にある囲炉裏で豚肉が良い具合に焼き上がった頃、宴は最高潮に達する。
「オヤジ、そろそろ話をしてくれよ!」
誰からともなく、そんな声が上がる。同時に沸き上がる「お
これこそが、この店に人々が集まる最大の理由だった。
店主はかつて冒険者として各地を巡り、その逸話は内容そのものが面白いだけでなく、彼が元共和国の宮廷道化師「ジャスター」だったことから、話術そのものが非常に巧みで、いつの間にか聞き手を引き込むのだ。
「そうだなぁ。さて、そろそろ一杯欲しい頃だなぁ」
「よし、俺がおごる!」
囲炉裏のそばに置かれた彼専用の椅子にどっしりと腰を下ろした店主に、客の一人がそう声をかける。
自分で運んできた、なみなみと注がれた銅のジョッキを店主が手に取り、一口飲んで喉を潤す。
「で、今日はどうする?」
「久々に
おごると言った男が、人気の話の一つである冒険譚をせがんだ。
「これは俺が冒険者だった頃に聞いた話だがな――伝説とされた
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