魔王様、日常系で生きていたい。
神無月《カミナキツキ》
第1話「魔王、現代にて」
聳え立つビル、道路を走る車たち、沢山の民衆……
──そんな中に魔王一人……
「変わったなぁ……」
随分と変わったものだ。
全部が全部石造りで馬車や騎士がそこら中歩き回ってた時代はいつの頃や……
魔族も居ないしぜーんぶ人、人、人……
「まあしょうがないか……」
俺、負けたし……
──
神代の時代、魔王が魔族を勇者が人族を束ねてドンパチ戦争を行っていた時代……
仲間もどんどん死んでいき、四天王だのも死んじゃって、とうとう勇者と一騎打ち。
「楽しかったなぁ」
まあ、結末は俺が魔法でふっとばされた挙げ句に両手切り飛ばされて死んだんだけど……
……死んだは違うか、俺不死身だし。正確には封印が正しいか。
結果、何千年も眠った挙げ句、起きてみればなんとも様変わりした世界に投げ出されて。
文字は……変わってなかったから読めたけど、西暦って何? 神暦じゃないの?
しかもなんかいろんな人がよくわからない板向けてくるし……
「まあでも、そんなこんなで焦ってた頃も、何年前だっけなぁ……」
まあ、結論いえば慣れが来るんだよね。
なんとか持ってた装飾類を売れる場所を見つけて今のお金を貰って、服装変えたらそう云う人も消えた訳だし、今ではTシャツにジーンズでよくわからない板……スマホってやつ? 片手に散歩しながらブッ◯オフで漫画を読み漁る毎日。
漫画って凄いね、いろんな事が物語で描いてあるんだもん。
途方もない暇つぶしの人生を過ごす俺としては随分と生きやすい世の中になったもんだ。
あの頃も暇すぎて侵略してみたり、魔法作ってみたり色々してたらなんか成り行きで戦ったりで結局のところ、魔王してたのだって暇つぶしの一つだったんだよなぁ。
今は法律だの条例だのでド派手なことは出来ないけどそういうのもう十分あの頃に出来たしこれからは穏やかな日常系で生きていこう。
「えっと、チーズバーガーのセット一つ」
「ドリンクは何にしますか?」
「コーラ・ゼロお願いします」
「レシートの番号でお呼びしますので隣のカウンターでお待ち下さい」
店員さんも去っていったし、最近ハマってるYou◯ubeチャンネルを見ながら待っていよう。
しかしながら、暇は潰せてもやっぱり一人って寂しいなぁ……
あの頃は暇な時に四天王とボードゲームしたり色々してたけど、そう云う仲の人も現代ではどう作ればいいのかまるでわからん。
「198番のお客様ー?」
呼ばれた取りに行こう。
チーズバーガーとMサイズポテトにコーラが乗ったトレーを持って空いてるテーブルに座る。
「ねぇーあの人なんか良くない?」
「えぇ~アンタあーいうタイプが好みなの?」
向かいの通路を挟んだ奥からそんな声が聞こえる。
チラ見すればJKがチラチラ俺を見ながら会話していた。
「私ああいう強面って無理」
「えーでもなんか漢!って感じで格好良くない?」
JKたちの会話が弾んでいる。
しかし、こういう時に突っ込んでいくのはどうやら現代ではNGらしい、所謂セクハラというものに該当するようだ。
俺は眼の前で香り際立つチーズバーガーにかじりながらYou◯ubeを見て過ごす。
これでいいのだ。日常系とはまさにこういうのっぺりとした平和な日々の連続であるべきなのだ。
「ごちそうさまでした」
食べ終わったゴミをゴミ箱に入れてトレーを戻す、JKを横目に通り過ぎた。
さてと、帰ったら今季のアニメ確認するか……
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