第3話 カナリアと鉱夫
「ヒィー」
振りかぶったつるはしを見たオトナ達は目をつぶって縮こまった。
「いくよ」
「え?」
その隙をついて、フードの子の手を取り狭い坑道に入る。
「ちょっ!おいガキ!」
オトナ達のことだコドモですら狭いと思ってる坑道に入ることはできないだろう。
「行こう」
「いや、え?」
強引に手を引き坑道の奥に逃げる。当然ランプなどの明かりを持っていないのでだんだんと暗くなっていく。
完全に先が見えなくなったころ感じるのは、しっかりとしたつるはしの重みと、握った手の温かさだけだった。
「大丈夫?」
「心配ない。気にする必要もない」
病人に無理をさせたのだ。気にもする。
「それよりも、気にすることがある」
「?」
そう言いながらフードの子は手を振りほどいた。
「出方」
「?」
出方?後ろを向いて、来た道を戻れば……
「あっ!」
来た道にはオトナがいる。見つかったらただじゃ済まないだろう。
「ほかに道は?」
坑道は入り組んでる。探せばどこかに道はあるだろう。
「もしかしたらあるかも……」
「そう」
「あ、ちょっと……」
そう言うと、フードの子は前に進み始めた。一歩また一歩と離れるたびに少しづつ見えなくなっていく。
「戻れなくなっちゃうかもよ」
「その時はその時」
引き留めようとなれない脅しをかけるも止まってくれない。
「……」
ついに姿が完全に見えなくなったころ感じるのは、しっかりとしたつるはしの重み、だけだった。
そしてだんだんと一人でいることが怖くなってくる。たまらなくなったボクは
「ちょっとまってよ!」
追いかけることにした。
※※※
「ねぇ君いる?」
そう言いながら手を前に出し前方を調べる。光の届かないこの場所では目で見ることができない、だからこうして手の感覚をつかって前の安全を確保しているのだ。
「どこ?」
しばらく進むと、前に突き出していた手に柔らかい感触を覚える。
「……ん」
「いるんだったら返事くらいしてよ」
ボクはそうフードの子に言う。もう少し早くいってくれたら、怖さを感じる時間が減ったのに。
「明かりとか、持ってない?」
「持ってたらとっくに使ってるよ……」
暗闇、坑道、夜、孤独、帰れるかわからないこの状況、ボクにとって恐怖でしかない。一つでもとりのぞけるのなら取り除きたいものだ。
「はぁ……」
「なに?道具は毎回返さないといけないんだから持ってるはずがないよ」
ため息をつかれたのでそれに反論する。お金がないのだ。道具はすべて借り物。ランプもつるはしもヘルメットも返さないといけない。もしも返さなかったら……
「そのつるはしは?」
「落ちてた」
「んじゃぁランプも?」
「落ちてる……かも?」
つるはしを返すの忘れた子は何されたんだろう……考えるだけでぞっとする
「ん」
「?」
関係のないことを考えていると、フードの子が手をつかんできた。
「こっちの方がはぐれない」
そう言うと今度はフードの子がボクの手を引く。
「そういえば名前は?」
「え?」
急に名前を聞かれ少し驚く
「ダっダン!」
「私はカナリア、炭鉱夫の味方さ」
※※※
あとがき
読んでくれてありがとうございます。
古くからカナリアは炭鉱夫に危険を知らせると為に一緒に坑道に潜っていてそうです。うーん……坑道の危険とは何でしょうか(すっとぼけ)
さてさて、皆さんが一番気になっているだろう。カナリアちゃん結局どんな子なの問題……ある意味かわいい子ですよ
応援、コメント、星をくれると作者が死ぬほど喜びます。ぜひ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます