第24話
王都への帰還から数日――。
砦での戦いの功績が評価され、僕は正式に「王国騎士団の特別隊員」として認められることになった。
だが、これは単なる名誉職ではない。王宮内での立場が大きく変わったことを意味していた。
「レオン様、これで正式に王国の一員ですわね!」
セシリアは嬉しそうに微笑んでいる。
「いや、僕はまだ騎士として未熟だし……。」
「そんなことはありませんわ。実戦経験を積んで、確実に成長されていますもの!」
確かに、影狼との戦いで自分なりに何かを掴めた気がする。だけど、それと同時に――
(僕の力のこと、もっとちゃんと理解しないとな……。)
◆
そして、騎士団への正式な編入が決まったことで、避けられない問題が発生した。
「レオン様が"どんな魔法でも使用できる"ですって?」
ある日、王宮の貴族たちの前で魔法の適性を示す機会が設けられたのだ。
イリスが測定した際に「魔力量測定不能」と出たことはすでに知れ渡っており、一部の貴族たちは僕を「大賢者の生まれ変わり」だと勝手に持ち上げていた。
「噂が独り歩きしているみたいですね……。」
「……イリスのせいだよな?」
隣で観察しているイリスに目を向けると、彼女は涼しげな顔で頷いた。
「事実を伝えただけよ?」
(……もう少しオブラートに包んでくれよ!)
そして、問題の実演――
「では、レオン殿。我々にその力を示していただこう。」
貴族の一人が、王宮の訓練場で僕の前に立つ。
「お相手は、王国魔術師団の筆頭、バルド様に務めていただきます。」
バルドというのは、中年の厳格な魔道士だ。
彼は僕を一瞥し、杖を構えた。
「君がどんな魔法でも使えるというのならば、少し試させてもらうぞ?」
そう言うと、彼はすぐさま魔法を発動した。
「《フレイム・ランス》!」
炎の槍が僕に向かって飛んでくる――
(やるしかない!)
咄嗟に、僕は右手をかざして、脳内で魔法のイメージを描いた。
(……使え!)
「《フリーズ・バリア》!」
瞬間、氷の壁が現れ、炎の槍を完全に防ぐ。
「なっ……!」
「まさか、本当に別系統の魔法を……!?」
貴族たちがざわめく。
僕自身も驚いていた。
(やっぱり、僕は……。)
「ふむ、なるほど……。では、これならどうかな?」
バルドは更なる魔法を唱える。
「《ライトニング・ボルト》!」
今度は雷撃が僕に向かって落ちてくる。
(なら、こっちは……!)
「《エア・シールド》!」
風の壁を展開し、雷を拡散させた。
完全な魔法の応酬――
そして、それを目の当たりにした貴族たちは確信した。
「彼は本物だ……!」
「やはり、大賢者の生まれ変わりなのでは……!?」
(ち、違う! 違うのに!!)
◆
こうして、またしても僕の誤解は深まる一方だった。
だが――
(……僕の力、もっと知る必要があるな。)
成り行きで始まった魔法の試験だったが、僕の中には新たな決意が芽生えていた。
「レオン様!」
訓練場の外で待っていたセシリアとイリスが駆け寄ってくる。
「素晴らしかったですわ!」
「ふふ、やっぱり興味深い存在ね。」
(……もう、どうにでもなれ!)
そうして、僕はさらに深く、王宮の思惑に巻き込まれていくのだった。
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