第24話

王都への帰還から数日――。


砦での戦いの功績が評価され、僕は正式に「王国騎士団の特別隊員」として認められることになった。

だが、これは単なる名誉職ではない。王宮内での立場が大きく変わったことを意味していた。


「レオン様、これで正式に王国の一員ですわね!」

セシリアは嬉しそうに微笑んでいる。


「いや、僕はまだ騎士として未熟だし……。」

「そんなことはありませんわ。実戦経験を積んで、確実に成長されていますもの!」


確かに、影狼との戦いで自分なりに何かを掴めた気がする。だけど、それと同時に――


(僕の力のこと、もっとちゃんと理解しないとな……。)



そして、騎士団への正式な編入が決まったことで、避けられない問題が発生した。


「レオン様が"どんな魔法でも使用できる"ですって?」


ある日、王宮の貴族たちの前で魔法の適性を示す機会が設けられたのだ。

イリスが測定した際に「魔力量測定不能」と出たことはすでに知れ渡っており、一部の貴族たちは僕を「大賢者の生まれ変わり」だと勝手に持ち上げていた。


「噂が独り歩きしているみたいですね……。」

「……イリスのせいだよな?」


隣で観察しているイリスに目を向けると、彼女は涼しげな顔で頷いた。

「事実を伝えただけよ?」


(……もう少しオブラートに包んでくれよ!)


そして、問題の実演――


「では、レオン殿。我々にその力を示していただこう。」


貴族の一人が、王宮の訓練場で僕の前に立つ。


「お相手は、王国魔術師団の筆頭、バルド様に務めていただきます。」


バルドというのは、中年の厳格な魔道士だ。

彼は僕を一瞥し、杖を構えた。


「君がどんな魔法でも使えるというのならば、少し試させてもらうぞ?」


そう言うと、彼はすぐさま魔法を発動した。


「《フレイム・ランス》!」


炎の槍が僕に向かって飛んでくる――


(やるしかない!)


咄嗟に、僕は右手をかざして、脳内で魔法のイメージを描いた。


(……使え!)


「《フリーズ・バリア》!」


瞬間、氷の壁が現れ、炎の槍を完全に防ぐ。


「なっ……!」

「まさか、本当に別系統の魔法を……!?」


貴族たちがざわめく。

僕自身も驚いていた。


(やっぱり、僕は……。)


「ふむ、なるほど……。では、これならどうかな?」


バルドは更なる魔法を唱える。


「《ライトニング・ボルト》!」


今度は雷撃が僕に向かって落ちてくる。


(なら、こっちは……!)


「《エア・シールド》!」


風の壁を展開し、雷を拡散させた。

完全な魔法の応酬――


そして、それを目の当たりにした貴族たちは確信した。


「彼は本物だ……!」


「やはり、大賢者の生まれ変わりなのでは……!?」


(ち、違う! 違うのに!!)



こうして、またしても僕の誤解は深まる一方だった。


だが――


(……僕の力、もっと知る必要があるな。)


成り行きで始まった魔法の試験だったが、僕の中には新たな決意が芽生えていた。


「レオン様!」


訓練場の外で待っていたセシリアとイリスが駆け寄ってくる。


「素晴らしかったですわ!」

「ふふ、やっぱり興味深い存在ね。」


(……もう、どうにでもなれ!)


そうして、僕はさらに深く、王宮の思惑に巻き込まれていくのだった。


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