第2話
王宮の一室を僕らは集団ごとに割り当てられていたが、その部屋はキッチン、シャワーにバスタブ、トイレが完備され、贅沢な調度品と家具が一式揃っており、高級ホテルのスイートルームのようだった。
本当に体よく追放されずにすんでよかったと胸をなでおろしたものだ。男女で生活圏が区別されていないこと以外は満点だが、これはわざとだろう。痴情を利用し、男に地位を上げることに執心させる。
この世界において地位とは強さだ。十代の男は性欲を満たすため強さを求める。
人を家畜の様に考えなければ出ない発想。神からすれば人など家畜か。
「カナタ、この世界は端的に言ってなんだい?」
ソファで赤ワインのグラスを揺らしながらヒビキ会長は言う。僕らはさっそく日本の法律からの解放を楽しんでいた。
「端的に言ってRPGゲームの剣と魔法と魔物の世界です。ただ、魔法とは別にスキルというものがあり、被召喚者は神の加護でそれを得られます。この世界の住人にも時折発現する者がいます。ただ、レアスキル含めすべてのスキルは魔法で同じような結果が再現できますし、スキルも魔法と同じように魔力を消費するのではっきりいって私がこの世界の設定を添削するならスキルという概念は要らない設定です。例外はステータスの上昇や成長速度加速系のスキルでしょうか」
「僕らの異能はこの世界ではどうだい?」
「女神の知識に異能の概念はありませんでしたからなんとも……ただ、普通に使えているので異能学園での戦闘と同じくらいには我々の強さはこの世界でも通用できるのでは」
「つまり最強か」
「懸念点がひとつ。女神のいう魔王軍の指揮者は魔神とよばれ、魔王候補を異世界から召喚しています。どうやら日本ではない別の世界から。ちなみに異世界から召喚する理由はこの世界の住人ではステータスにカウンターストップがかかるからです」
「それのなにが懸念なの?」
僕が訊くとヒビキ先輩が先に答える。
「ボクたちのような
「あ……」
自分たちの優位性からくる余裕に冷や水を浴びせられたようだった。
カナタも、ライカも、イノリも、黙りこくって下を向く。
ただ果無否引だけが傲岸不遜に口元をつりあげる。
「なにを恐れる?ボクたちの日常は
そう言ってグラスを傾けクスクス笑う。傲岸不遜に、不敵に、彼女はいつでも笑うのだ。
ああ、これだからこの人は――
僕は口の片側を吊りあげる。先輩からうつった癖だ。煙草に火をつけ、煙を吐き出し余裕ぶった表情を浮かべる。少しでも憧れの人に似せるように。
部屋の机の上の水晶玉が光った。女神の声がする。
「勇者候補の皆様、明後日に捕獲した魔物との実戦を行います。レベリングのためでもあるのですが、ニホンジンは生き物を殺すことに不慣れなので戦闘になれてもらいます。明日は自由ですので、解放してある鍛錬所で各々スキルの使い方を体にしみ込ませてください」
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