第27話『快気祝い』
陽菜の呪いが解け、すべてが少しずつ元の平穏を取り戻しつつある。
そんなある日、奏斗から嬉しいお知らせが届く。
「――陽菜の快気祝いがあるんだ。家族で集まるんだ。結愛も来てくれないか?」
奏斗の言葉に、結愛は思わず嬉しそうに微笑む。
陽菜の回復を祝うことができるこの機会に、彼女も一緒にお祝いできることに心から喜んだ。
その日の夕方、結愛は奏斗と共に長谷川家へと向かった。途中、奏斗が「今日は、陽菜の回復をお祝いするだけでなく、結愛にも感謝の気持ちを伝えたいんだ」
と言って、少し照れくさそうに笑った。
「うん、そっか。わかった」
結愛は少し照れながらも、奏斗の言葉に心が温かくなるのを感じた。
長谷川家に到着すると、温かな光が差し込む広いリビングで、奏斗の母親が笑顔で迎えてくれた。陽菜は、ピンクワンピースを着てソファに座っていたが、すっかり元気そうな姿に、結愛は驚きと喜びの入り混じった気持ちで彼女を見つめる。
「結愛さん、来てくれてありがとう!」
陽菜が元気に声をかけてくれると、結愛は微笑んで応じた。
「陽菜ちゃん、すごく元気そうで嬉しいよ!」
結愛は心からの言葉を掛けると、陽菜は少し照れた様子で笑った。
「うん、結愛さんのおかげだよ! 本当にありがとう!」
その言葉に、結愛は胸が熱くなる。陽菜が無事回復したこと、そして自分の音楽が彼女に届き、呪いを解く事に成功した。その事を実感し、心の中で深い満足感を感じた。
家族全員が集まると、奏斗のお父さんが声をかけてきた。
「さあ、みんな、今日は陽菜の回復を祝おう! 結愛さん、君のおかげで陽菜が元気を取り戻したんだ、感謝しているよ!」
「そんなことは!」
結愛は少し照れくさくなりながらも、心の中でその感謝の言葉をしっかり受け止める。
「でもね、結愛ちゃんがいなかったら、こんな風に陽菜が元気になる事は難しかったと思うの」
奏斗のお母さんがにっこりと笑いながら言うと、奏斗達がその言葉に頷いた。
その後、長谷川家全員でテーブルを囲み、食事を楽しんだ。陽菜は、まだ完全に元気を取り戻したわけではないが、彼女の笑顔を見ると、すべてが順調に回復していることが伝わってきた。
「これからは、ずっと元気で過ごせるようにね」
結愛は陽菜に向かって穏やかな笑顔を見せ、陽菜もまた、明るく笑って答えた。
「うん! もう何も怖くないよ!」
その瞬間、結愛は心の中で確かな実感を覚える。陽菜が本当に自由を手に入れ、彼女自身の未来が広がっていくのを感じる。自分の音楽が、誰かの運命を変える力を持っていたことを改めて実感し、結愛はこれからも、その力を信じて進んで行こうと思った。
食後、奏斗がそっと結愛の手を取る。
その優しさに、結愛は心から安心し、自然に手を握り返す。
二人の間に流れる静かな空気が、どこか温かく、心地よい。
「結愛……本当に、ありがとう」
奏斗が穏やかに言った。
「ううん、私はただ……やるべき事をしただけだよ」
結愛は照れくさく笑いながらも、その言葉を受け止めた。
奏斗の手は温かく、気持ちが良い。
結愛はずっと握っていたいと思った。
どうか、この幸せが続きますように。
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