第21話『横浜デート』


 学校帰り。

 結愛と奏斗は、横浜の「みなとみらい」に足を運ぶことに決めた。

 普段の学校生活では味わえない、ちょっとした気分転換が二人には必要だった。

 街の景色はまるで絵画のように美しく、賑やかな通りや水辺の景色が、二人を包み込む。


「今日は楽しもう!」


 奏斗の提案に、結愛は少し驚きながらも、すぐに笑顔を浮かべて答える。


「うん、行こう!」


 遊園地の入り口に到着すると、目の前には色とりどりのライトが煌めき、観覧車やジェットコースター、様々なアトラクションが並んでいた。賑やかな音楽が流れる中、二人はまず観覧車に乗ることに決めた。


「高いところから見る景色、きっと綺麗だぞ」


 奏斗は結愛に向かって優しく微笑み、手を差し伸べた。結愛は少し照れながらその手を取ると、二人は観覧車の乗り場へと向かう。

 観覧車がゆっくりと動き出すと、横浜の街がどんどん小さく見えてきて、海と空が一体となった絶景が広がっていく。二人はしばらく無言でその景色を楽しんでいたが、しばらくして、奏斗がふっと口を開く。


「結愛、楽しいか?」


 結愛は一瞬驚いたが、すぐに頷く。


「うん、すごく楽しいよ。ありがとう、奏斗」


 その言葉を聞いて、奏斗は少し照れくさそうに微笑んだ。


「よかった」


 そして、観覧車が頂点に達した瞬間、奏斗が突然、結愛の手にそっと触れた。驚きとともに結愛は彼の方を見ると、奏斗は窓の外を眺めていた。結愛の心臓が一瞬、早く鼓動を打った。


「奏斗……?」


 結愛は少しだけ顔を赤らめながら、言った。

 彼は振り返る。

 奏斗は結愛を見る。


「……」


 二人の間には、穏やかな空気が流れ、言葉がなくてもその距離が縮まっていることを感じる。


「結愛、俺……」


 奏斗の言葉が途切れ、彼は少し照れたように視線を逸らす。その瞬間、結愛の心の中で、何かが弾けるように高鳴った。彼の手が、優しくて温かくて、まるでその一瞬が永遠であってほしいと願うかのようだった。


「……」


 結愛は彼の手を握り返す。


 観覧車がゆっくりと降り始めると、二人の手はまだしっかりと握られたままだった。結愛はその温もりを感じながら、心の中で何度もその瞬間を噛み締めていた。

 そして、観覧車を降りると、二人は再び笑顔を交わし、遊園地の他のアトラクションを楽しみながら、幸せな時間を過ごしていった。

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