第10話『呪いの解放の方法』


 結愛、奏斗、そして女神アリアは、長谷川奏斗(はせがわ かなと)の家に集まることになった。

 長谷川家の家は非常に広く、結愛の家の3倍はある。


「すごい家だね」


 結愛が思わず感嘆の声を上げる。

 家の中に入ると、玄関で待っていたのは奏斗の母親だった。


「いらっしゃい!」

「こんにちは、神織結愛です」

「わしは、女神アリアじゃ」

「こんにちは、結愛さん、アリア様」


 結愛は驚きの表情を浮かべながら、アリアを冷静に話していることに少し戸惑った。


「ささ、入ってください」


 奏斗の母は部屋に案内してくれた。

 広いリビングには、長いテーブルと椅子が並んでいて、奥にはソファーとテレビがある。結愛はとりあえず椅子に腰を下ろした。

 女神アリアは結愛の隣に座り、奏斗は女神アリアの向かいの椅子に座った。そして、奏斗の母は奏斗の隣に座った。

 家政婦がやってきて、お茶とケーキをテーブルに置いていく。


「結愛さん、アリア様、来てくださってありがとうございます!」

「いえ、どういたしまして」

「ふむ」


 奏斗の母は感謝の言葉を述べる一方で、少し涙を浮かべた。


「陽菜が自分に歩けるようになったのは、結愛さんとアリア様のおかげです。本当にありがとうございます!」


「でも、陽菜さんは、まだ呪いがかかっています。完全ではないんです」

「事情は奏斗から聞いています。それでも、それでも……」


 奏斗の母は、その言葉が途切れ、涙をこぼした。


「母さん、大丈夫だよ」

奏斗は母の肩に触れる。


「ハンカチをどうぞ」


 陽菜が奏斗の母にハンカチを渡そうとした。


「いいのよ。そんな綺麗なハンカチ、使えないわ。大丈夫、ティッシュがあるから」


 そう言って、テーブルに置いてあったティッシュを2枚、取り出し、涙を拭く。


「母さん、これからのことを話そう」

「そうね」

「陽菜の呪いを解く方法だ」


 奏斗が言う。

 

 女神アリアは静かに語り始める。


「ゼアルスの呪いは、ただの支配の魔法ではない。彼の力は、陽菜の心と魂を深く縛りつけている。その呪いを解くためには、ただの魔法では不十分じゃ」


 結愛はその言葉に目を細め、深く考え込む。


「じゃあ、どうすれば陽菜ちゃんを助けられるの?」


 女神アリアはゆっくりと答える。


「ゼアルスの呪いを解くためには、結愛、自身が本来持っている力に目覚める必要がある。それが、臨界点を突破する者、『臨界者』になることじゃ。」


「臨界者……」


 結愛はその言葉を繰り返す。


「神織がその臨界者になれる確率は?」


 と、奏斗が真剣な表情で尋ねる。

 女神アリアはため息をついて答える。


「そうじゃの。わしの指導が入って、5年後でやっと、2%じゃの」

「2パーセント……」


 奏斗はその数字にショックを受け、下を向いてしまう。


「奏斗、それでも可能性はゼロじゃないだけマシじゃないの」


 奏斗の母は微笑み、彼の肩を優しく掴んだ。


「そうだけど……」


 それから3時間くらいかけて、話し合った。結愛が臨界者になって、解呪する方法いがい、良いアイディアは見つからなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る