松前「幽霊船」

松前藩の中心地、松前城には、夜中に見えるという幽霊船の伝説が語り継がれています。この話は、江戸時代の中頃から始まります。


ある晩、松前の港に突如として一艘の船が現れました。その船は霧に覆われ、灯り一つなく、静寂の中、まるで浮かんでいるかのように揺れていました。港にいた漁師たちは、異常なその様子に気づき、すぐに城に報告しました。


松前藩主、松前慶広が自ら城壁から眺めると、船からは悲痛な叫び声や、何かを求めるような声が聞こえてきました。しかし、船に近づくとそれは消え、再び霧の中へと消えていきました。


この幽霊船は、松前藩がアイヌとの交易を始めた頃の悲劇に由来します。伝説によれば、松前藩がアイヌとの交易を独占するために、競争相手の商人たちを船に乗せ、海に沈めたと言われています。その商人の魂が、復讐と救いを求めて、夜な夜な松前の海に現れるようになったのです。


特に冬の夜、雪が降る中で見つけられるこの幽霊船は、見た者に災厄をもたらすとされています。船を見た漁師や商人たちは、次々と病に倒れたり、事故に遭ったりしたという話が残っています。


また、この船は松前城の近くを漂うだけでなく、時には城の中庭にまで現れると言われています。城の侍たちは、この船が見える夜には、決して外出せず、城内に籠もる習慣がありました。


この伝説は、松前藩の歴史的な背景と、当時の交易や支配に関する暗部を反映しているかのようです。松前城周辺では、今でもこの幽霊船の話が語られ、夜の海を見る際には、恐怖と敬意を持って臨む人が多いです。

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