襟裳「風の館」
襟裳岬の静けさに包まれた博物館「風の館」は、その表向きの静寂とは裏腹に、恐ろしい秘密を抱えています。この場所は、海難事故で命を落とした者たちの魂が集う場所とされているのです。
博物館の中心には、一つの展示がひときわ異彩を放ちます。それは、19世紀の大嵐で沈んだ船の船長が被っていた帽子です。夜が訪れると、この帽子はガラスケースの中で自ら動き、まるで誰かがそれを被っているかのように見えます。地元の人々は、この帽子に船長の怨念が宿っていると信じ、近づくのを恐れています。
ある夜、博物館の監視員が閉館後の巡回中に、奇妙な光景に遭遇しました。帽子のある部屋から、突然波の音と叫び声が聞こえ始めたのです。彼が恐る恐る部屋に入ると、展示物が一斉に揺れ始め、帽子はケースから浮かび上がりました。監視員はその光景に恐怖して逃げ出そうとしたが、ドアは閉じられたまま、開かなくなっていました。
部屋の中で、冷気が急に増し、霧のような何かが現れました。その霧の中から、無数の手が伸びてきて、監視員を引きずり込もうとしました。絶望に駆られた彼が叫ぶと、霧は一瞬で消え、帽子は再びケースの中に戻りました。しかし、その瞬間、監視員の目の前で、博物館の天井から大量の海水が降り注ぎ、部屋全体が水に満たされました。
翌朝、監視員は気絶した状態で発見され、博物館は水浸しになっていました。しかも、監視カメラには、水が降り注ぐ様子や霧の現象は一切記録されていませんでした。ただ、帽子が置かれた展示ケースだけが、奇妙にも全く濡れていなかったのです。
さらに深い地下室には、保存状態が悪い古い船の模型が置かれていますが、そこでも恐ろしい現象が起こります。夜の静寂の中、模型からカタカタと不気味な音がし、それぞれが海に沈むかのように動き出すのです。時には、模型から海水が流れ出し、地下室に水たまりを作ることも。
博物館の訪問者の中には、閉館後に館内に残った者たちが、複数の亡魂に取り囲まれ、恐怖で錯乱した者もいます。地元の人々は、満月の夜や嵐の夜に、展示物から悲鳴や泣き声、そして海の波の音が聞こえると言います。
もしあなたが襟裳の博物館を訪れるなら、閉館時間を過ぎて滞在することは絶対に避けてください。あなたが見るもの、聞くもの全てが、過去の悲劇と、そこに住まう死霊たちの怒りを呼び覚ますかもしれません。
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