【ぽっこりと】素敵な貴女のお腹にぜい肉が!?【ぜい肉シリーズ】
月詠 透音(つくよみ とーね)
美しくも強き女騎士団長セリーナ。お腹にぜい肉がついてしまう
薄曇りの日差しがカーテン越しに差し込み、部屋の中をぼんやりと照らす。
女騎士団長セレーナは、ふかふか寝台の上で大の字になり、完全にリラックスした姿勢で伸びをしていた。
数週間前まで、彼女は騎士団長としての激務をこなしていた。
金色の髪が王国の風になびく。
澄んだ藍色の瞳は敵国の動きに目を光らせ、戦闘訓練ではその優雅な肢体が躍動した。
誰よりも厳しく指導を行い、部下からは「美しくも鉄壁の女団長」と呼ばれていた。
しかし、今は違う。
全てを忘れて長期休暇を満喫しているのだ。
「はぁ~、休暇最高! おへや最高!」
部屋に響く声には、任務から解放された幸福感と、どこか怠惰な響きが混じっている。
床には空っぽになったワインボトルやチーズ、宅配ピッザの欠片が散乱し、丸く膨らんだクッションの上には手をつけたままの果物皿。
まさにぐうたらの極みだった。身を装うものは、赤く優雅なショーツ一枚という、開放感抜群の姿で今日も過ごしていた。
「ふー」
セレーナは腹を撫でた。ふと感じる、違和感。
「ん?」
Gカップの豊かな胸が下方移動したのか?と最初は思った。
上半身を起こし、鏡を見る。そこには、ふくらんだお腹が映っていた。
「ちょっと待って……これ何!?」
いくつもの戦場を駆け抜け、剣を振るい続けた身体が、このざま。
鏡に映るその「変化」は、彼女の誇りをひそかに蝕んだ。
しかし、自らの選択を悔やむより先に、彼女は肩をすくめて笑った。
「まぁ、ちょっとくらい休んだっていいじゃない!」
そう呟いた瞬間――
「団長、どうされてますか~? 入りま~す!」
唐突にドアが開いた。
現れたのは配下の騎士、カイルだった。訓練帰りらしい彼は汗ばんだ姿のまま、満面の笑顔で部屋に飛び込んでくる。
「団長、調子はどうです? たまには顔を――」
言葉が止まる。
カイルの目線が、セレーナの腹に釘付けになったからだ。
食べ過ぎが一目で分かるほど、ふっくらとした腹部が、赤く優雅なショーツに乗っかっている。
一瞬の沈黙、そして――
「ぶはっはははは! 団長、それ何ですか!? その腹! はははは!」
カイルは膝をつき、床を叩いて笑い出した。涙が目尻に溜まり、声にならない笑いが部屋中に響く。
「うるさいっ!これはその、あれだ! 違う、見るな! 貴様、見るならセクシーなショーツか、魅力的なおっぱいだろ!」
セレーナは慌ててクッションを抱え、両手で腹を隠そうとする。しかし、その仕草がまたカイルの笑いを誘った。
「いや、だって団長が……はははっ、戦場でのあの鋭さはどこに!」
「黙れ! 貴様のような駄犬が笑うとは何事だ!」
怒鳴り声とともにクッションを投げつけるセレーナ。しかし、カイルはそれを片手で受け止め、さらに大笑いを続ける。
「私は、ちょっと休暇を満喫しただけだ! この後すぐトレーニングを再開する! だから問題ない!」
セレーナの声はどこか必死だったが、カイルの笑いは止まらない。
やがて、笑い疲れたカイルは肩を上下させながら立ち上がり、にやりと笑った。 「わかりました、団長。秘密にしておきますよ。でも、俺が訓練場で全員に話したらどうなるかなぁ……」
「やめろ! 言うな! カイル、それを口にしたら……分かっているだろうな?」
赤く優雅なショーツ、それ一枚の姿でセレーナは息巻いた。
「はいはい団長、まずは服を着ましょうか? 赤パンティ一丁で叫ばれても目のやり場に困るんですが」
それから、カイルはセレーナとピッザを食べながら雑談を交わし「また、来ますね~」と部屋を後にする。
ドアが閉まる音とともに、セレーナは再び鏡を見つめた。
その腹を撫で、彼女は呟いた。
「よし、明日からトレーニング頑張ろう……明日からな……」
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