尾形さんの心情
尾形さんのスマホのブラウザのタブには、当時の閲覧サイトが今でも残されている。
尾形さんは、スマホで何かを検索したり、調べ物をしたりすると、必ずそのタブを消さずに次のタブを開いて使う。
そのため現在では734個もタブが溜まっているそうだが、それらをタップしていくと、当時の尾形さんの心境が窺える。
私が尾形さんに話を聞くことができたのは一度きり。
そのとき尾形さんは当時のことを思い出すために、グーグルのタブを見ながら話をしてくれた。
尾形さんが見ていたウェブサイトの画面を見ると、当時の尾形さんの心情をはっきりと想像することができる。
柳さんが死体を見た翌日、二人は明るくなってから「〇州極楽ホテル」で改めて死体探しをしているが、それにあたって尾形さんはまず「〇州極楽ホテル」と検索し、廃墟めぐりをしているブログや、廃墟データベースを作成しているサイトを閲覧している。
これといった情報が得られなかったのか、次に尾形さんは「〇州極楽ホテル 怪談」と検索するが、それもこれといった情報は見つからない。
かなり念入りに調べたらしく、最終的にはアマゾンで売っている怪談本のレビューにまで行きついている。
レビュアーはその怪談本の中の「〇州極楽ホテル」の記事に少し触れているだけなのだが、少なくとも書籍や、ネットにも出回らない地元の噂レベルではもう少し情報があることが見て取れる。
尾形さんはその怪談本をアマゾンで注文しているが、その後尾形さんは大幅に方針を転換し、「幽霊 心理状態」「幽霊 精神疾患」などと検索し、病院の統合失調症や認知症について解説したサイトを閲覧している。
どうやら、柳さんの精神状態を心配していたようだ。
柳さんからすれば、自分は実際に死体を見たと思い込んでおり、死体が消えたばっかりに誰にも信じてもらえないのは悔しいだろう。
そのうえ、相手が自分を統合失調症や認知症ではないかと疑っているのだから、内心穏やかではいられない。
しかし、柳さんがムキになればなるほど、尾形さんからは認知症や統合失調症の感が否めなくなってくる。
この負の連鎖が後に恐ろしい事態を引き起こしたのだが、今は尾形さんが柳さんの精神状態について疑いを抱いていたことだけ記しておく。
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