Forbidden

あらかた自己紹介が終わったあと、僕たちは奥へ進むことにした。暗い森の奥に、何かよく分からない物体が発見されたのだとか……それが所謂「呪い」だとか、「バグ」だとか言われてるけど、真相が分からないからこうやって研究をしているそうだ。


先頭はハーベルさん、続いてイグリスさんがいる。女性陣は後ろの方に、アヴェルさんは僕の目の前に。僕がいるのは真ん中の後ろの方ってこと。


先代の皆さんに関しては行方不明と聞いているが、生きているのかは僕たちの知ったことでは無い。とりあえず前に進むのみ。


なにやら怪しい雰囲気が漂っていて、ミデリアさんとかずっと怖いって言ってる。大丈夫ってメアルさんが慰めてる。姐さんって呼ぼうかな。


「なんか腐った匂いがするぜ」


そう切り出したのはハーベルさん。言われて鼻を利かせてみれば、言った通り。何か、肉のようなものが腐った匂いがする。


「……行ってみるか」


先頭を切り、ズカズカと進んでいくハーベルさん。それについて行く僕ら。

その先の景色は変わらず不気味。


僕たちが異臭の発生源を見つけた時、今僕たちがさせられていることがなんなのか、というのを再認識させられるのはもう不可避であった。


「う"……これは…」


酷く傷つけられ、性別も分からなくて。もはや変死状態の遺体。さすがに嗚咽を漏らす人も。イグリスさんは吐き気を催すかのように口を抑えていたり、ミデリアさんなんかもう泣いている。


「ねぇ……帰らない…?」


イグリスさんはもう怯えきっているようだった。それも無理は無い。俺だってずっと震えてるもん。


「帰れませんよ。僕たちはもう…」


「んなこと言うなよ」


そう突っかかるハーベルさん。それに応えるように睨みつけるアヴェルさん。


「事実ですよ。探し当てるまで帰れないと、そう伝えられていますが。」


「関係ないだろ、ここから出りゃいい話じゃねぇか」


「その肝心の出る方法はあるんですか?」


「これから探せばいいだろ、気長に行こうぜ」


「ここは死も生も常に隣にあるんです、そんなことしたらすぐ野垂れ死んでしまいます」


思想が真逆な彼らはどうも意見が合わず、こうやって衝突を始める。

アヴェルさんはしっかり積み重ねて、念には念を入れて、いわば「合理的」とでも言うのだろうか。

一方、直感で全てを解決するハーベルさん。計画とかは立てようとせず、枠にハマったやり方をしない主義。


「もうやめなさい、もたもたしていたらそれこそ死ぬわよ?」


「…それもそうですね」


喧嘩の仲裁に姐さんことメアルさんが入ってくれたことにより口論は強制終了。また続けて前に進む僕ら。


帰れるかなんて、僕らにはまだ分からないことに変わりは無い。ただ進み続けるのみ。

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